2025年12月6日(土)

脳が長持ちする会話

2025年1月18日

ユーモアが頭の働きを柔軟にする

 誰でもちょっとした失敗を毎日しているはずです。実際に私も、落語のマクラのように、講演会やセミナーの冒頭で失敗談をよく披露しています。

 期限までに使わなければと、地域振興券を持って買い物に出かけたら、端数は現金かカードで支払う必要があるのに、地域振興券しか持っていないので、結局お財布を取りに帰った。保育園の息子に持たせた着替えの下着が、着替えずにそのまま戻ってきて不思議に思ったら、色と大きさと生地が似ている夫の下着だった。お恥ずかしながら、このような話は枚挙にいとまがありません。

 失敗談に目を向けると、私の場合、1日1ネタくらいは簡単に見つかります。ただ、これは講演会の冒頭で場の空気をなごませるために使えそうだと思っていても、面白く話せるかどうかはわかりません。

 そこで、家族など身近な人を相手に、試しに話してみるということをよくやります。テニスの壁打ち練習のようなイメージですね。

 「こうするはずだったのに、こうなってしまった」というテンプレートに沿って、一度アウトプットしてみると、話す順番や2、3分に短くまとめるコツがつかめます。さらに、相手を変えて数回話して、場の空気がなごむようであれば、できればすべりたくない場で使える「最近の話」のネタをアップデートすることができます。

 失敗談がウケたかウケなかったかを、気にする必要はありません。大切なのは、「この話、面白いかな?」と頭を使い、その体験を覚えておき、実際に話してみることです。認知症になると大きく低下する認知機能である、体験を新しく覚える機能を底上げすることができます。 会話にユーモアを交えようと日頃から意識していると、頭の使い方が変わってきます。ユーモアのセンスなんてないと思っている人でも、失敗談ならトライしやすいでしょう。

 もちろん、試しに話してみる壁打ちをすると良いのは、失敗談に限ったことではありません。自分の体験を、すべってもとがめない人に一度話しておくと、いざというときに話題を提供でき、コミュニケーションを楽しめます。壁打ちは、アウトプットのための大切な準備になるのです。

脳が長持ちする会話
大武 美保子:著 ウェッジ
定価:1,870円(税込み)
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