2025年2月7日(金)

脳が長持ちする会話

2025年1月24日

 人生100年時代と言われています。中高年期以降、高齢になればなるほど気がかりなのが、認知症ではないでしょうか。高齢者がもっともなりたくない病気であり、親に一番なってほしくない病気でもあります。でも、脳の中で何が起きているかは外からは見えず、認知症になるかならないかは、誰にもわかりません。
 しかし、外からは見えないはずのその人の脳は、「会話」を通して見ることができます。普段からこういう会話ができていたら、この程度の認知機能が保たれているはずだ、ということがこれまでの研究で明らかになっています。会話には脳の健康度合いが反映されるのです。本連載では、脳科学の知見や最新のテクノロジー、AIの技術を集結させて考案された「脳が長持ちする会話」のコツをお伝えします。
*本記事は『脳が長持ちする会話』(大武美保子、ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
(lielos/gettyimages)

気まずさ解消で認知機能貯金

 電車の中やオフィスから駅までの道中、知り合いと一緒になったとします。親しい同期や同僚ならば気軽におしゃべりを楽しめるでしょうが、上司や部下の場合は、「おつかれさまです」と挨拶を交わしたきり、長い長い沈黙……。わざとスマホに目を落として忙しいふりをしてみたり、相手がスマホを取り出してくれたらホッとしてみたり。

 たった数秒、数分とはいえ「気まずい」と感じることの多いシチュエーションです。もちろん、黙っていたからと言って、仕事上のペナルティが科されるわけではありません。スルーしようと思えばできます。

 ただ、日常でよくあるこうしたシチュエーションが、長持ちする脳を創るチャンスだとしたらどうでしょう。スルーしようと思えばそれも可能なシチュエーションで、ひるまず会話してみる。そうすると、その分だけ脳が活用でき、認知機能貯金をしていることになるとしたら? ちょっと得した気持ちになりますし、実践のモチベーションも上がります。

 このようなとき、ポイントになるのは、一瞬で言葉を取り出せるかどうかです。相手が仕事関係者なら、一番の助けになるのは具体的な仕事の話でしょう。しかし、出くわした次の瞬間に、いきなりビジネスの話に入るのは、無粋と言えば無粋です。相手が面食らってしまう可能性があります。

 そこで、活用しやすいのが「そういえば」。「そういえばさっき」「そういえば今朝」と、「そういえば」をマクラ言葉に直近のできごとを話題にします。最近の話をする際には、最近あったことを新しく覚える機能、それを覚えておいて、タイミングよく思い出す機能をフル活用することになり、機能を使うことによる認知機能の底上げ効果が期待できるからです。さらに、「そういえば今朝、駅の自動改札で慌てて定期券を出したつもりが、ゲートが開かなくて、よく見たらクレジットカードだったんです」と失敗談と合体させる方法も汎用性があります。こうして自分から口火を切ることで会話のきっかけがつかめ、気まずさを解消できます。そうすると、自動改札機やクレジットカードの種類によっては使える場合もありますよ、と言った話題に広がったりします。

 

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