ちょっとした「ハプニング」や「見立て」を話題にする
大武: 面白い話って、必ずしも楽しい出来事じゃなくても良いのです。たとえば最近、お風呂に入ろうと思ったらお湯が出なかったことがあって。
辛酸: それは焦りますね…。
大武: 後でわかったのですが、ガスには電気のメーターのように、ブレーカーが落ちるような仕組みがあるようです。お湯を出しながら別のガス機器を使ったところで、とどめを刺したようで、止まってしまったんです。
辛酸: へえ、ガスにもブレーカーのようなものがあるんですか?
大武: 管理会社の方からは、「ありえないほど容量が小さいものが付いていた」と言われて、交換することになりました。
辛酸: でもそれ、話としては確かに面白いですね。
大武: 面白かったのはそこからで、「もし明日お風呂に入れなかったら?」という妄想が止まらなくなって。「近所でどこに銭湯があるだろう?」と探したら、もうたたんでしまっていたりして。では近くのホテルか、少し電車に乗って日帰り温泉かとか、いろいろ調べ始めて…。
辛酸: 一気に世界が広がっていく(笑)。
大武: そう。なるべく安いところが良いので、温泉付きのビジネスホテルはどこだろうと、「じゃらん」を延々と見たりして。1時間、妄想だけで時間が過ぎました。
辛酸: でも、そういうちょっとしたハプニングがあると、インプットも増えるし、視野が広がりますよね。「明日入れなかったら?」と考えるだけで、近所の地理や選択肢を調べることになるし。
大武: 結果として、頭の中で新しい経路を使うことになる。ワッハッハと声を出して笑うような話じゃなくても、「ああ、そういう仕組みなんだ」とか「この辺にこういう施設があるんだ」とか、気づきが生まれるんです。
辛酸: 私も最近、大型家電量販店へスマホの買い替えに行ったんです。そしたら店員さんが入れ替わり立ち替わり来て、「この契約にしろ」とか家の電気代をここと契約すれば家電が安くなるとか、早口でいろんな提案をしてきて…。陰キャだらけで妙に居心地が良いホストクラブのようだと思いました。
大武: ホストクラブ(笑)。
辛酸: 月1,000円くらい払うと、4カ月くらい「何でも聞きに行ける」サービスがあるらしくて。それを「ホストクラブだと思えば」と考えると、売り込みなのですがちょっと可愛く見えてきて、少し癒されるというか…。
大武: 見立てを変えると、同じ体験でも違うものになりますよね。
辛酸: そうなんです。スタッフによっても対応が全然違っていて、「それはできません」とバッサリの人もいれば、やたら陽気でフレンドリーな、陰キャの中の陽キャ的な人もいて。久しぶりに若い男性たちに接客してもらえたな、というような体験でもありました。
大武: 量販店ってBGMも明るさも情報量も多くて、ちょっと独特の疲れ方をしますよね。
辛酸: 電磁波が飛び交っているような感覚で落ち着かない(笑)。しかも私、電波が悪くてLINEのバックアップに失敗したらしくて、「できませんでした」と言われ、写真の引き継ぎも一部あやしくて…。深刻じゃないけど、また行かなきゃいけないのかなって。
大武: それも含めて「最近の出来事」ですね。会話の材料になります。
