2026年2月28日(土)

家庭医の日常

2026年2月28日

 その後の大規模な介入研究では、ビタミン剤そのものに寿命を延ばす劇的な効果は認められていない。

なぜ「因果関係」の特定は難しいのか?

 観察研究は、「因果関係のヒント(仮説)」を見つけるためのとても重要なステップだと考えることができる。だから、今回話題のコーヒーと紅茶の摂取が認知症リスクや認知機能に与える影響を分析した研究も、それが即座に「コーヒーを飲めば認知症の予防になる」というわけではないが、今後この因果関係に迫る研究を計画したくなる、重要な先行研究としての意義がある。

 医学研究で因果関係を証明するための「ゴールドスタンダード」は、以前のこのシリーズの記事『<医学的客観性か、患者への配慮か>医師と患者はどう診療方針を決めるのか、医療における「エビデンス」の特殊性を理解する』でも説明したランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial; RCT)である。

 だが、RCTも万能ではない。現実の医療現場では、次に述べるような「壁」があり、因果関係の特定と臨床への適用はそう容易ではない。

① 研究倫理の壁

 おそらくこれが最も大きな壁だろう。臨床研究が人を対象とする以上、「有害であることが予想されること」を研究参加者に遭遇させることは許されない。

 たとえば、タバコの害を検証するために、ランダムにグループ分けした人たちに一定期間タバコを吸わせることは倫理的でなく、そんな研究は実施不可能だ。

 また、介入としてある薬剤を使用したグループの方が明らかに治療成績が良いと研究途中でわかった場合、対照群にそのままプラセボ(見かけは同じだが有効成分を含まない偽薬)を投与し続けることは、治療機会を奪うことになり倫理的に継続は難しい。

② 外的妥当性(一般化)の壁

 RCTは「厳選された条件下」で行われるため、そこで得られたエビデンスが現実の多くの患者に当てはまるとは限らない。

 RCTでは結果をクリアに出すため、例えば「高齢者を除外」「慢性疾患がある人を除外」「妊婦を除外」など、研究参加者の条件が厳しく設定されている。しかし、実際の臨床の場では、マルチモビディティを抱えた患者や、患者固有の条件が研究参加者と異なることが少なくない。今回話題の研究でも、研究参加時点(ベースライン)で、がん、パーキンソン病、または認知症を患っている患者は除外されていた。

 また、研究参加者はよく管理された環境で行動を記録されている。薬剤の服用が介入である場合には、服薬アドヒアランスは非常に高い。コーヒーや紅茶であれば、その種類や飲用回数も正確に管理・記録される。しかし、「現実の生活」では、ついうっかり飲み忘れたり、あるいは飲み過ぎたりしてしまうこともあり、研究条件の再現は難しくなる。

③ コストと時間の壁

 RCTは非常に「重い」研究手法である。


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