変わった人はよく「宇宙人」と呼ばれるが、シンガーソングライター、友部正人さんはそんな人だ。
映画『遠来〜トモべのコトバ〜』は1996年から2016年までの友部さんと妻、小野由美子さんのニューヨーク暮らしを描いてはいるが、見るうちに、マンハッタンをさまよう旅人の気分になれる。
わかり合えないことと距離の関係
タイトルの「遠来(えんらい)」は80年代、友部さんが30代前半のころにつくった代表作で、東京に暮らす語り手が、ニューヨーク、フランス、インド、台湾にいる友人に問いかける形をとっている。
<君がニューヨークにいるのと同じように/ぼくは東京にいる>。こう始まる歌には、耳に残るフレーズがいくつもある。
<君はインドで赤いけさを着てお祈りしているという/ぼくは東京でコーヒーをのみながら/お祈りしているよ>
<君はフランス人の書類第一主義のやり方に腹をたて/ぼくは日本人のあいまいなやり方に腹をたてる>
<そしてぼくも君も風向きが変わり/ヨットは同じ方に走りはじめている>
9分に及ぶ歌詞は終盤になるとさらに冴えてくる。
<君は台湾にいてアジアが見えたかい/ぼくは東京にいてこの町もわからない/こんなにたくさんの人が生きているのにという/そんな悔しさにおそわれることはないかい>
歌はこう締めくくられる。
<そしてぼくも君もこの地球の上で/わかり合えないまま距離ばかりを大切にしている>
人と人との距離、見えない空間、計れない時間がこの映画のテーマだ。
伊勢真一監督は「歌の最後の言葉につかまれたから、この映画をつくったんだと思う」と言う。「わかり合えないことと距離を大切にすることが、つながっているようで論としてつながっていない。だから、いろいろと考えさせられる。人と関わるときの奥行きやどうしようもなさ、わからなさがあるから、人は生きているんだ、みたいなね」
