2026年4月18日(土)

Wedge REPORT

2026年4月18日

 変わった人はよく「宇宙人」と呼ばれるが、シンガーソングライター、友部正人さんはそんな人だ。

 映画『遠来〜トモべのコトバ〜』は1996年から2016年までの友部さんと妻、小野由美子さんのニューヨーク暮らしを描いてはいるが、見るうちに、マンハッタンをさまよう旅人の気分になれる。

(写真 小野由美子)

わかり合えないことと距離の関係

 タイトルの「遠来(えんらい)」は80年代、友部さんが30代前半のころにつくった代表作で、東京に暮らす語り手が、ニューヨーク、フランス、インド、台湾にいる友人に問いかける形をとっている。

 <君がニューヨークにいるのと同じように/ぼくは東京にいる>。こう始まる歌には、耳に残るフレーズがいくつもある。

 <君はインドで赤いけさを着てお祈りしているという/ぼくは東京でコーヒーをのみながら/お祈りしているよ>

 <君はフランス人の書類第一主義のやり方に腹をたて/ぼくは日本人のあいまいなやり方に腹をたてる>

 <そしてぼくも君も風向きが変わり/ヨットは同じ方に走りはじめている>

 9分に及ぶ歌詞は終盤になるとさらに冴えてくる。

 <君は台湾にいてアジアが見えたかい/ぼくは東京にいてこの町もわからない/こんなにたくさんの人が生きているのにという/そんな悔しさにおそわれることはないかい>

 歌はこう締めくくられる。

 <そしてぼくも君もこの地球の上で/わかり合えないまま距離ばかりを大切にしている>

 人と人との距離、見えない空間、計れない時間がこの映画のテーマだ。

 伊勢真一監督は「歌の最後の言葉につかまれたから、この映画をつくったんだと思う」と言う。「わかり合えないことと距離を大切にすることが、つながっているようで論としてつながっていない。だから、いろいろと考えさせられる。人と関わるときの奥行きやどうしようもなさ、わからなさがあるから、人は生きているんだ、みたいなね」


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