2024年4月21日(日)

家庭医の日常

2024年2月23日

 病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(Jacob Wackerhausen/gettyimages)

<本日の患者>
C.B.さん、59歳、男性、蕎麦屋主人。

「先生、エビデンスって何ですか」

「えっ、C.B.さん、今日はいきなりどうしたんですか。それはとても重要なことで、出来るだけわかりやすく説明しようと思いますが、まず、どうしてその疑問が出てきたのか、その辺りを話してもらえるとありがたいです」

「いやね、うちの息子が看護師になる勉強をしてるでしょ。で、昨夜、『エビデンスに基づいたケアが大事』だって言ってたんです。そいで、『エビデンスって何だ』って息子に尋ねたら、何か医療のルールみたいなことだと言うんです。でも、どうも要領を得ないんで、ここは一つなんでも相談できる先生に聞いてみようと思ったようなわけです」

「なるほど」

 C.B.さんは、この町で人気の蕎麦屋の四代目である。見かけはいかにも昭和の職人気質(かたぎ)の雰囲気を醸し出している。だが、実は彼がかつて大学で生命科学を専攻していたことを知る人は多くない。

 蕎麦が痩せた土地でも育つ秘密を解き明かそうとして、大学に近いあの蕎麦屋に通いながら研究を続けるうちに、三代目に見込まれて(その娘さんにも見初められて)婿入りした、と本人から聞いたことがある。私の働く診療所には、脂質異常症をメインに予防、健康維持・増進のために年に4回やって来る。

「エビデンス」と「エビデンスレベル」

 私たち家庭医が診療に関連して「エビデンス」と呼ぶものは、臨床研究の結果で示されるもので、「根拠」と呼ぶこともある。そのエビデンスが生み出された臨床研究の質と量によってエビデンスの確からしさに差があり、「エビデンスレベル」と呼ばれる区分ができる。

 エビデンスレベルは、ガイドラインやそれを作る団体・学会などで設定が若干異なるが、基本的には、「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial; RCT)」と呼ばれる研究デザインで行われた研究が複数あって、それらの結果が一致している場合にエビデンスレベルが「高い」と言える。「今後この問題について新しい研究が行われたとしても結果が大きく変化する可能性は少ない」ということである。

 RCTは、研究の対象を2つ以上のグループに無作為(ランダム)に分けて、あるグループにはその研究で調べたい治療や検査などを行い(介入と呼ぶ)、他のグループには別の介入をする(あるいは何もしない)。一定の期間の後で、介入の有益性と害についてクループ間で差があるかを統計学的に検定する、という研究だ。


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