酒の消費量は2000年代に入って減少しているが、とくに激しいのがビールだ。かつて酒の売り上げの8割近くを占めていたが現在は3分の1まで落ち込んでいる。
長い景気低迷時代に比較的高価なビールに代わって売り上げを伸ばしたのが低価格のチューハイだ。そして販売各社は3~5%だったチューハイの度数を2000年代に8~9%に増やした「ストロング系」を発売した。これが売り上げ増に大きく貢献してチューハイ市場の過半数を占めるようになり、度数12%という商品まで登場した。
チューハイはアルコールをジュースや炭酸で割ったもので、ソフトドリンク感覚で飲みやすい。度数が5%程度のビールに比べてストロング系は酔いが早い。さらにビールの350ミリリットル(㎖)缶の価格が210円程度であるのに比べて缶チューハイは120円程度と安価である。
飲みやすく、度数が高く、安いという3拍子がそろったことからヒット商品になったのだが、大量飲酒による健康上および社会的なリスクが高いということでかねてから批判があり、チュウハイ市場でのストロング系の割合は減ってきた。
例えばアサヒビールは79品目のストロング系を販売していたが、現在は1品目になっている。さらに同社は健全で持続可能な飲酒文化を目指すとして、今後売り出すストロング系の度数を8%未満に抑えることにしたと報道された。それでは酒と健康の関係から見てストロング系についてどのように考えたらいいのだろうか。
なぜアルコールを求めるのか
酒の歴史は長い。紀元前8000年頃、黒海東岸のジョージア地方で土器に入れたぶどうを地中で発酵させたワインが飲まれ、紀元前5000~10000年のメソポタミアでは、大麦のビールが飲まれていた。
中国では6世紀半ばに蒸留酒の白酒が作られ、11世紀にはヨーロッパでウィスキーなどの蒸留酒が登場した。こうして世界各地でさまざまな酒が造られたのだが、酒が広く受け入れられた理由は何だろうか。
暑い夏に飲む冷たいビールも、真冬の夜に飲む熱燗も実にうまい。食欲が増して食事がすすむ。酔うほどに嫌なことを忘れて陽気な気分になる。食品には、カロリー摂取と味を楽しむことと生理作用という3つの機能があるが、酒はカロリー摂取のためではなく、味と生理作用のためと考えられる。