2024年12月22日(日)

食の「危険」情報の真実

2024年1月31日

 ご飯を食べることでスギ花粉症を治す「スギ花粉症緩和米(花粉症緩和米)」。開発から約20年、実用化が目前といわれながらコメを「医薬品」とする行政判断から実現せず、お蔵入りするかに思われていた。それが昨年、岸田文雄首相肝いりでまとめられた花粉症対策に盛り込まれ、再び脚光を浴びることに。今度こそ実用化なるか――。

写真はイメージ(SAND555/gettyimages)

すでに人への臨床試験で効果を検証

 花粉症緩和米は、遺伝子組み換え(GM)技術を使ってスギ花粉症の原因物質(花粉)の一部を、本体部分である胚乳に蓄積させた米。開発したのは、農業生物資源研究所(現在は農林水産省所管の農業・食品産業技術総合研究機構=農研機構)である。花粉症で困っている人たちのためにバイオ技術で何かできないかということでの開発だが、当時消費者に忌み嫌われていたGM技術を有効活用することでGMの社会的認知を上げ、消費者に受け入れられるようにしたいという思いもあった。

 アレルギーの原因となるアレルゲンを少しずつ食べることでアレルギー症状を改善させる治療法を「減感作療法(アレルゲン免疫療法)」と呼ぶが、スギ花粉の一部を組み込んだご飯を毎日食べることが減感作療法となるわけだ。点眼薬や点鼻薬などの症状を抑えるための対症療法と異なり、減感作療法は花粉症を根治させる唯一の方法でもある。

 スギ花粉症の減感作療法を行う薬には現在、皮下注射と舌下錠の2つがある。国がまとめた花粉症対策では、舌下錠の供給量を今後5年以内に、現在の約25万人分から約100万人分へと増加させる計画だ。

 すでに治療法があるのだから、花粉症緩和米は不要と思うかもしれない。ただ、皮下注射も舌下錠も完治までに3~5年と時間がかかるのに加え、投与する薬の中に天然の抗原(花粉)を含む花粉エキスが使われているため、アナフィラキシーショックといった副作用の可能性が避けられない。これに対し、花粉症緩和米に含まれる抗原はGM技術でアナフィラキシーを引き起こさないように設計されているため副作用が起こりにくく、取り込む抗原の量が注射や舌下錠の1万倍以上に増やすことも可能で完治までの期間がかなり短縮できるという。


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