2024年12月31日(火)

Wedge REPORT

2023年9月15日

 2024年(令和6年)度の林野庁関係予算概算要求には政策目標として、「国産材の供給・利用量の増加(3400万立方メートル(㎥)[21年]→4200万㎥[30年まで])」とされている。供給・利用量とは主に丸太と燃料材の生産量らしく、これを毎年100万㎥ずつ増加させていき、2030年(令和12年)以降は42万㎥を持続させようというのだろうか。どういう根拠に基づいた数値なのか不明であり、花粉発生源対策との関連も闇の中である。

 花粉対策と関係ないのなら、なぜ100万㎥増やす必要があるのだろうか。最近はウッドショックでせっかく木材価格も少し上がったところなのに、政府はこれに冷や水を浴びせるつもりなのか。

 原料を安く仕入れたい大手の木材加工業や、ウッドショックで燃料材が値上がり・不足して操業停止の相次ぐバイオマス発電所などは大喜びだろうが、一番の被害者はこれまで良質材生産を担ってきた篤林家や良心的な間伐を主体に実行してきた自伐林家であろう。これら営々と日本林業を支え続けてきた林業者を根こそぎ廃業に追い込むのではないか。

 花粉対策では、スギ林所有者には伐採すれば協力金が交付されるので、それで木材価格低下への補償をしたつもりなのだろうが、細々ながらも経済行為として何とか継続されていた木材生産としての林業は、花粉症対策によって壊滅することになるだろう。

 それが分かっているから、毎度の「スギ材の需要拡大」を対策の柱に掲げる。しかし、安いから曲がりなりにも需要があるのであって、供給過多を解消するような需要開発など夢のまた夢である。

 重要施策の中には「木材輸出の強化」もある。輸出先は中国が断トツの首位で115万㎥もあるが、水産物の例もあり、この国相手に安定的な輸出を望むのは危険すぎる。

 スギ需要拡大に向けた「国民運動を促進」するのだそうだが、この国の行政は行き詰まるとすぐに精神論を持ち出す。この物価高にのんきなものだ。

困難な生産性向上

 差し当って増伐に必要なものは労働力の確保であるが、これは非常に困難な問題なので、造林とともに後に述べる。まずは、もう一つ必要な生産性の向上について見ていきたい。

写真 1 林業機械(筆者提供、以下同)

 生産性向上といえば、建設重機をベースマシンとした車両系の高性能な林業機械の導入である。しかし、当然ながら急斜面での使用には限界がある。さらに高能率の機械は大型化し、既存の林道では通行できない。

 トラック輸送も同様で、運転手不足もあって大型車にしたい。そこで拡幅や橋梁の架け替えが必要になる。

 『Wedge』2023年6月号で『瀕死の林業 再生のカギは成長よりも持続性』を特集しております。特集記事を含めた林業に関する記事は本サイトでも読むことができます。雑誌の試し読みはこちら

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