2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2023年9月15日

言わずもがなの林業労働者不足

 少なからず伐採量や造林面積を増やすなら、林野庁の方針にあるように「林業の担い手の育成・確保」が必須である。それでなくても現状についてみると、林業就業者数は20年にほぼ6万人で65歳以上の高齢化率は23%(全業種7%)である。

 あと10年で1.5万人が減るだろう。ただでさえも人手不足、少子化の進む時代に6万人を維持することさえ困難なのである。

 林業労働者をめぐる問題点は多い。

①労働強度がきつい。いくら機械化が進んでも運転台にすわっているだけの仕事ではない。急傾斜で複雑な地形の林地で、伐採搬出では重い丸太やワイヤーロープと格闘しなければならず、機械が届かない場所ではチェーンソーと燃料を持って歩行する。造林も歩行作業が基本で、刈払機などの機械も草刈り鎌などの手工具の延長にすぎない。特に炎天下など厳しい気象条件下では、体力の消耗を強いられる。

②労働災害の発生率(死傷千人率)は21年に24.7でダントツの1位(2位は同種の木材製造業で12.5、3位は鉱業10.8)で、危険な作業であること。

③熟練を要する。伐採搬出作業では伐倒、造材、集材など多数の工程があり、季節や木材市況にあわせて丸太の仕様を変えなければならない。造林では植物・動物の知識ばかりでなく、多様な森林づくりには森林生態系に関する知識が必要である。作業にかかる技能と広範な知識を求められ、適性がない人には無理がある。

④組み作業である。作業能率をあげ、労働災害を防止するにはチームワークが必要で協調性が求められる。

⑤最大の欠点は、このようなスーパーマン的な林業労働者にもかかわらず賃金が低いことである。木材市況によって決まる丸太の価格から逆算して諸経費や賃金が決まる労働者の能力が反映されにくい仕組みなのだ。

⑥労働時間が、季節、天候によって不規則である。雨の日は休業、日中の長さによって労働時間を変えざるを得ない。

 以上のような実態では、新規参入者はほとんど見込めない。同じ命を懸けた重労働と思われ、安定した給与の警察官や自衛官でさえ応募者が減っている。彼らとの大きな違いは、人間でなく大自然が仕事相手ということだが、その魅力を評価してくれる人が果たしてどれほどいるのだろうか。

 林業労働者の確保は、まず賃金の引き上げと待遇改善からだが、森林組合や林業事業体にはそれを実現する実力はない。せめて新規参入者が技術の習得に要する5年間ぐらい国が賃金を支給してはどうだろう。

 また林野庁は安易に「外国人材の確保」と言うが、円安で日本が出稼ぎ先としての魅力を失っている中で、日本人にも人気のない職種じゃ論外だ。まず、外国人であっても日本人と同じ待遇が基本である。

 外国人材なら安い賃金で雇えるぐらいの発想では日本の国土は守れない。ましてや盗伐まがいを平気でする悪質業者に外国人を託すことなく、国の責任で養成を行い、日本の山河を愛せるまっとうな人材として育てるべきだ。

 外国人が日本の山林を買い占めているとも聞くが、気がついたら森林所有者も山村住民も外国人ばかりだったというような安易な川上政策にならないか心配である。

 「まず隗より始めよ」で日本人労働者の待遇改善を優先してから、外国人材の確保に乗り出すべきである。

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