2024年7月20日(土)

Wedge REPORT

2023年9月15日

 林野庁は、林道の手前の農道も含めて拡幅改良するようだが、山側を掘削すると、大雨で崩壊する危険性が高くなる。掘削で発生した残土は沢筋に設けられた残土処理場(土捨て場)に貯められるが、熱海の土石流災害を想起する。

 もともと林業における最重要課題は、林道等の基盤施設の整備なのだが、これは一朝にしてできるものではなく、営々と築き上げるものである。間伐のような消えてなくなるものへの投資を優先して、基盤施設として先々に残る林道への継続的で地道な投資を怠ったのが悔やまれる。

少花粉スギへの植え替えの怪

 20年度の立木伐採面積は8.7万ヘクタール(ha)で、造林面積は2.8万haであるからざっと3分の1、民有林に関しては4分の1しか造林されていない。民有林の造林面積のうちスギは36%で、伐採面積のほぼ1割しかスギは造林されていない。

 結局、民間には再造林する意欲はないし、スギに対する期待も少ないことがわかる。それは現在の木材市況の反映であり、ほとんど100%再造林して50%もスギを植えている国有林の異常さが際立つ。税金の無駄遣いではないのか。

 林野庁はホームページ上の「森林・林業とスギ・ヒノキ花粉に関するQ&A」のQ7で「伐採した後は花粉の少ない苗木を植えるなどして、きちんと森林に戻していかなければ(はげ山のままでは)、水害や山地崩壊などの原因にもなりかねません」と、お得意の「はげ山論」を展開するが、毎年造林されない面積は6万haもあるはずだ。造林されずに放置された林地のほとんどでは天然更新が進み、はげ山になることはない(写真2)。

 はげ山になるのなら、造林地での下刈りや除伐は必要ないだろう。旺盛な天然更新力を駆逐して人工林は造成されるのだ。

写真 2 スギ人工林跡の天然更新

 表1を見るかぎり、伐採面積の1割程度しかスギは植栽されていないのだから、特に政策的にドライブをかけなくても、スギ人工林が減っていくことは間違いない。国有林も民有林に倣ってスギの植栽を止めればさらによい。

 林野庁は片方では生物多様性といいながら、少花粉スギなどの生物学的に異常な個体のクローンを「大量増産」して、現在の有花粉スギに置き換えようとしている。大量のスギやヒノキを植林して花粉を増産してしまった反省がどこにもない。

 大量の少花粉スギのクローンが将来どのような病害をもたらすかわかったものではないし、品種改良したものは外来種と同じで本来の自然界のバランスを壊しかねない。日本の3分の2の環境を支配している役所なのだから、責任感を持って、森林生態系をはじめあらゆる影響に敏感であってほしい。

 さらに、これは造林の現代的、根源的問題なのだが、シカやクマなどによる食害問題がある。造林地は草食性のシカにとっては食堂みたいなものだ。


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