これまで3回にわたって、間伐について紹介してきた。説明は長ければいいというものではないが、これまで多くの場合、間伐についてあまりに簡単な説明ばかりがなされていたようで、誰もがすぐに分かった気になっていた。一般市民だけでなく専門家でもそうだったようで、筆者の記事を読んで改めて考えさせられたという声が寄せられている。
最後に間伐に関わる問題点をあげてみたが、改善方法を簡単に示せない難問が多い。
手間のかかる選木
間伐対象木には胸高部に白いビニールテープ等が巻かれ、すぐにそれとわかるようにする。かつての国有林では、白テープの表示のほかに、根もと部分の樹皮を削って、ナンバーテープをホチキスで打ち、さらに極印(こくいん)を打刻した。
間伐後でも根もと部分に極印とナンバーテープがあれば間伐木だとわかり、それらがなければ盗伐木かも知れない。そうやって盗伐を防止していた。
手間のかかる仕事で、選木と野帳へのメモに1人、テープ巻と胸高直径の計測に1人、ナンバーテープと極印打ちに1人の3人体制で調査した。これではあまりに非能率・高コストとなるので、まず極印打刻が省略され、白テープ巻だけとなって、民有林ではとうとう伐倒手が選木して即伐倒するようになった。林業事業体や森林組合が選木から伐倒まで責任施工で請け負う、いわゆる業者選木がふつうになった。
業者選木で起きる〝盗伐的選木〟
筆者には間伐で盗伐されたという苦い経験がある。林野庁で国有林の出先機関の営林署長の時だったが、すでに極印打刻が省略され、根もと部分のナンバーテープだけが間伐木の証拠となっており、業者が不良木のナンバーテープを剥がして、優良木に打ち換えて伐採・搬出していたのだ。
間伐後の林分を見て驚いた。残っていた立木は、曲がり木や二股木(根元から幹が二つに割れている木)などの不良木、細くて樹冠(樹木の枝葉が集まった部分)のみすぼらしい劣勢木のオンパレードだった。
すぐに司法警察権による捜査を行ったが、証拠不十分で送致できず、損害賠償金を支払わせるにとどまった。調査員であり監督員であった森林官は戒告、署長と担当課長は監督不十分で訓告の処分を受けた。信用していた業者だったので、人生であれほど腹の立ったことはない。
現在は、多くが業者選木で、たぶん間伐調査も標準地調査程度に簡略化されていると思う。間伐木の表示もなくて、伐採手かハーベスタ(建設重機のアームの先に多機能なアタッチメント装着したもので、その場で伐倒・送材・枝払い・玉切りをすることができる。玉切りとは伐倒木を切断して丸太にすることをいう)の運転手が選木して、いきなり伐採する。作業効率はいいのだが、これがトラブルの原因になっている。価格の良い優良木から間伐してしまうからだ。