2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2023年8月6日

写真5:ホンシュウジカ 写真を拡大

④シカによる立木被害

 間伐によって、せっかく下層植生が増えても、最近日本各地で生息数を増やしているシカによる食害で、その多くが失われてしまう。アセビやマツカゼソウなど毒性のある植物ばかりが残る。毒があっても食草が足りないと、レンゲツツジやトリカブトまで食べられるようになった。

 こうして間伐済みの林内にシカが入ると、ツノ研ぎなどで造林木の樹皮が剥がされ、元玉(もとだま、節がなく木材として良い部分)の品質が著しく落ちる。それだけでなく、ヒルやダニがシカの体について運ばれ、生息範囲を広げて、林業従事者ばかりかハイカーまで悩ませる。

写真6:クマ剥ぎ 写真を拡大

⑤クマ剥ぎ

 シカと並んで最近目立つのが、ツキノワグマによる造林木の樹皮の食害である。5、6月の樹液の流動期に樹皮を剥いでその下の甘皮を歯でこそいで食べる。それも利用間伐をして林地残材の少ない林分に多いようだ。 林内を移動しやすいからであろう。

 写真6のようだと完全に元玉部分は商品価値がなくなるが、枯死する恐れさえある。せっかくここまで育てて間伐までしてこの有様だから、やってられない。造林という経済行為を完全に否定する事象である。

研究すべき間伐の〝危険な〟裏技

 写真7の間伐後の古い伐根を見てもらうと、普通の切り口だったら水平になっているはずなのに、斜面に平行して斜めになっている。このように樹幹に斜めにチェーンソーを入れて伐り離すと、伐倒木は元の方から斜面を滑っていく。そのため掛かり木が発生しないのだ。

写真7:斜め伐りの株

 ただし、伐りぬいた瞬間にチェーンソーを引いて退避しないと、伐倒手は下へ滑っていく伐倒木の枝葉に打たれて大けがをする。労働安全上この伐採手法は禁止されているのだが、掛かり木にならなくて能率が上がり、作業も強度も軽減できるので、闇で横行している。

 筆者は、このような危険とされる方法でも、安全にできる仕様を研究してみる価値はあると思う。現地の傾斜、伐倒木の直径の限度、樹種、チェーンソーの使い方、退避の仕方など安全なやり方が追求できないだろうか。

 掛かり木処理でも労働災害が頻発していることを思えば、研究してみる価値はあると思う。安全に関してのことなので、発議しにくいことは分かるが、闇で横行している実態を思えば、何とかしてあげたい。


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