タイで20日、友人14人をシアン化物で殺害したとして起訴された女性被告に、死刑判決が言い渡された。被告は複数の事件に分けて裁かれており、これが最初の判決。
バンコクの裁判所はサララット・ランシウッタポーン被告(36)について、裕福な友人と昨年旅行をし、その最中に飲食物に毒物を混入したと認定した。
事件が発覚したのは、死亡したこの友人の親族が自然死だと認めず、検視の結果、体内からシアン化物の痕跡が見つかったためだった。
警察がサララット被告を逮捕して調べた結果、2015年以降に似通った死亡事案が多数起きていたことが判明した。被告の標的になったとみられる1人は生存している。
警察によると、被告はギャンブル依存症だった。金を借りた友人たちの命を狙い、宝石や貴重品を盗んだとされる。
一緒に食事をした後に死亡
警察によると、被告は友人のシリポーン・カンウォンさん(32)と昨年4月、バンコクの西のラーチャブリー県に旅行した。川で仏教の安全祈願の儀式に参加したという。
シリポーンさんは旅行中、被告と食事をした後に倒れて死亡。その際、被告はシリポーンさんを助けようとしなかったとされる。発見時、シリポーンさんの携帯電話、現金、バッグがなくなっていたという。
この日の法廷前では、シリポーンさんの母親が娘の写真を手にしながら、「私の子どもよ、あなたは正義を得た。この世界には今日、正義がある」と話した。
母親はまた、判決文が読み上げられる際、怒りのあまり被告を直視できなかったと述べた。母親によると、被告は当時、ほほ笑んでいたという。被告は裁判で無罪を主張していた。
判決では被告に対し、シリポーンさんの遺族への賠償金200万バーツ(約890万円)の支払いも命じられた。
元夫と弁護士にも有罪判決
この日はまた、被告の元夫の元警官に1年4カ月、弁護士にも2年の刑が、それぞれ言い渡された。共に、被告が起訴を逃れられるよう証拠を隠したとされた。裁判では2人とも無罪を主張していた。
元夫は昨年自首した。警察は元夫について、サララット被告が元交際相手の男性を毒殺するのを手伝った可能性が高いとしている。
シアン化物は体内の細胞から酸素を奪い、心臓発作を引き起こすことがある。初期症状には、めまいや息切れ、嘔吐(おうと)などがある。
大量に摂取すると数秒で、肺損傷や意識不明、死に至る場合がある。少量でも大きな害をもたらす。
タイではシアン化物の使用は厳しく規制されている。無許可で入手した場合、最高2年の刑が科される。
(英語記事 Death penalty for Thai woman accused of murdering 14 friends with cyanide