2024年5月17日(金)

食の「危険」情報の真実

2024年1月31日

 実用化のためには、食品には医薬品としての機能を認めない食薬区分の厳しい規制を見直すことも必要だろう。そして実用化のカギを握るのが世論の盛り上がりだ。

 「花粉症緩和米を食べて花粉症を治したい」との声が多く上がれば、名乗りを上げる製薬会社も出てくるだろうし、国も「医薬品」としての商品化を早める方策を考えざるを得なくなる。あなたが花粉症なら、ぜひ声をあげてみてほしい。

日本の「ゴールデンライス」に

 花粉症緩和米と同じくGM技術で開発された米に「ゴールデンライス」がある。黄金色をした米で、ビタミンAのもととなるβカロテンを合成する遺伝子が組み込まれ、食べると体内で必要なビタミンAに変換される。ゴールデンライスは、ビタミンA欠乏症(VAD)による幼児の失明を防ぐ目的で開発された。

 日本でVADが問題になることはないが、VADはアジアなど米を主食とする地域に多く、世界保健機関(WHO)によると、世界で年間最大50万人の子供がVADが原因で失明し、その半数が失明後1年以内に死亡している。食べている米の1食分をゴールデンライスにすると、子どもの1日のビタミンAの必要量の30~50%が摂取できるという。

 5歳未満の子どもの17%、約200万人がVADに罹患しているとされるフィリピンで21年、世界で初めてゴールデンライスの商業栽培が認可された。フィリピンに本拠を置く「国際稲研究所」によると、22年12月には100トン超のゴールデンライスが収穫され、VADの子どもが多い地域に無償配布されたという。

 フィリピンでは28年までに50万ヘクタールでのゴールデンライス栽培を目指している。医薬品ではなく食品であることが普及を促進することは容易に想像できる。

 VADのような深刻な病気ではないが、日本人の国民病としての花粉症に対応した花粉症緩和米は、「日本版ゴールデンライス」と呼んでもいいだろう。フィリピンでゴールデンライスが広く栽培され普及したとき、日本の花粉症緩和米はなんらかの形で花粉症に悩む多くの人の救世主になっているだろうか。

   
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