ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は22日、ロシアには「いつでも使える状態」の強力な新型ミサイルの備蓄があると、テレビ演説で述べた。ロシアは21日、ウクライナ東部ドニプロ攻撃を「新しい通常兵器の中距離弾道ミサイル」で攻撃したと発表していた。
プーチン大統領は予定外のテレビ演説で、「オレシュニク」と名付けた新型ミサイルは、迎撃不可能だと主張。今後も「戦闘状況」での使用を含めて、発射実験を繰り返していくと述べた。
プーチン大統領は、新型の極超音速ミサイル「オレシュニク」の飛行速度が音速の10倍だと説明。量産開始を指示したと述べた。大統領はこれに先立ち、「オレシュニク」を使用したのは、ウクライナがアメリカ製「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」とイギリス製の長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」をロシアに対して使ったことへの反応だと話していた。
ロシアが2022年2月に始めたウクライナ全面侵攻は今月19日、開戦1000日目を迎えた。19日にはウクライナが、アメリカ製長距離ミサイルを初めてロシア国内に発射し、20日には同様にイギリス提供の長距離巡航ミサイルをロシア国内に初めて使用。続いてロシアが21日、「オレシュニク」をウクライナ東部へ撃ち込むという、攻撃の応酬が続いた。
こうした状況でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領が「自分の行動がもたらした顛末(てんまつ)を実際に感じられるよう」に、「本格的に反応」するよう世界各国の首脳に求めた。
ゼレンスキー氏は、ロシアからの「新しい脅威に対して命を守ることのできる」新式の防衛システムを西側の協力諸国から確保するよう国防省に指示したとして、担当者たちの協議がすでに始まっているとも話した。
ウクライナ・メディアによると、ウクライナはアメリカ製の弾道弾迎撃ミサイル・システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」か、地対空迎撃ミサイル「パトリオット」システムの更新を求めているという。
爆発が3時間続き
ウクライナ東部ドニプロへのミサイル攻撃について目撃者は、通常とは違う光景だったと話した。攻撃された地点で爆発が相次ぎ、3時間続いたという。
使用されたミサイルがあまりに強力だったため、ウクライナ当局は当初、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に似ていると話していた。
英防衛コンサルタント会社「シビライン」の創設者で最高経営責任者(CEO)のジャスティン・クランプ氏はBBCに、ロシア政府はおそらく「オレシュニク」を使った今回の攻撃で、警告を発したのだろうと説明した。「オレシュニク」はその速度に加え、ロシアが持つ他のミサイルよりも技術的に進んでいるため、ウクライナの防空システムに深刻な打撃を与える能力を備えているという。
世界的な紛争の深刻な危険
ウクライナとロシアの戦争がここ数日で激化したことを受け、各国首脳は次々に警告を発している。
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は22日、「東での戦争は、決定的な段階に入りつつある。未知のものが近づいていると感じる」と発言した。教職員会議に出席した首相は、「紛争は劇的な規模になっている。世界的な紛争という意味で脅威は深刻だし本物だと、ここ数十時間の展開が示した」と述べた。
ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、ロシアは「主に軍事力を政策の根拠にする」だけに、西側諸国はプーチン大統領の警告を「額面通り」に受け止めるべきだと述べた。
北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記は、核戦争の脅威がこれほど大きくなったことは「かつてない」と警告し、アメリカ政府が北朝鮮に対して「攻撃的で敵対的」な政策をとっていると非難した。
北朝鮮はこれまでに、ロシア軍に協力するため兵士数千人を派遣している。ウクライナ軍は、ロシア西部クルスク州に侵攻している部隊がすでに北朝鮮兵と衝突したと報告している。
アメリカのジョー・バイデン大統領は、ロシアが北朝鮮兵を戦場に投入したことに対応するため、ATACMSのロシア国内使用をウクライナに認めたとしている。
バイデン氏と交代して来年1月に大統領となるドナルド・トランプ氏はこれまで、自分が就任すればたちまちウクライナでの戦争を終わらせると公約してきたが、具体的な方法には言及していない。
こうした中でロシアもウクライナも、第2次トランプ政権が発足する前に、戦場で有利な状況を作ろうとしている。
ゼレンスキー大統領は22日夜、毎晩の動画演説で、中国にも言及。中国外務省が「(すべての当事者は)落ち着いて、行動を抑制するべきだ」と述べた後に、ロシアが新型ミサイルを使用したことは、「中国のような国の立場を(ロシアが)ばかにしたに等しい」と批判した。
「中国のような国、グローバルサウスの国々の首脳の一部は毎回、抑制を呼びかける」ものの、ロシアはそれを無視してきたと、ゼレンスキー氏は述べた。
さらに大統領は、ドニプロ攻撃を受けてウクライナ議会が22日の会議を延期したことを批判。通信アプリ「テレグラム」でゼレンスキー氏は、空襲警報が鳴らない限り、通常通りに働くべきだとして、ロシアからの警告は「今日は休んでいいという意味ではない」と述べた。
「警報が鳴ったら、シェルターに行く。警報が鳴らないなら、働いて奉仕する。戦争の最中にはこれしかない」と、ゼレンスキー氏は呼びかけた。
(英語記事 Putin says Russia will use new missile again in 'combat conditions' )