2024年7月20日(土)

食の「危険」情報の真実

2023年11月28日

 糖尿病の治療薬が「やせ薬」としてダイエット目的で使用されて品薄状態となり、厚生労働省や日本医師会が「適正使用」を呼び掛ける異常事態となっている。食べたい物を我慢したくない、でも太りたくない人にとって、薬を飲むだけでやせられるのは願ってもないことだが、さまざまなダイエット法が出ては消えるを繰り返す中で登場したこの薬、ダイエットの決定打となるのだろうか。

(riccardo67/gettyimages)

日本と米国で異なる肥満と肥満薬への認識

 やせ薬として使用されている糖尿病薬は、2型糖尿病治療に使われる「GLP-1受容体作動薬」。GLP-1は、食後にインスリンの分泌を促進する働きを持つホルモン「インクレチン」の1つで、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させ、血糖値を正常にする働きがある。脳の満腹中枢を刺激して食欲を抑える効果もあり、薬を使えば少し食べても満腹になるので食べる量が減ってやせる、というわけだ。

 日本で糖尿病治療薬として承認されているものに、注射薬の「オゼンピック」「マンジャロ」「ビクトーザ」、飲み薬の「リベルサス」などがあるが、オゼンピックと同成分の注射薬「ウゴービ」は11月に肥満症の治療薬(抗肥満薬)として公的医療保険の適用対象となった。

 肥満症は、日本ではBMI(体格指数)が25以上で、高血圧や脂質異常症など肥満による健康障害が1つ以上ある、もしくは内臓脂肪蓄積がある場合をいう。世界保健機関(WHO)の肥満の定義はBMIが30以上なので、これに照らせば肥満というほどではない人を日本で肥満症としているわけだが、日本人を含むアジア人はBMIが25未満でも2型糖尿病などの発生リスクが高いことからこの基準を採用している。

 日本で承認されている抗肥満薬に「サノレックス」があるが、これは効果が今一つなうえ副作用が多く、欧米ではほとんど使われていないのが現状だ。ウゴービの承認は、抗肥満薬としては約30年ぶりとなる。承認されたのは、やはりやせる(体重を減らす)効果が高いためだが、やせるのはあくまでも肥満症という病気の治療のためであって、健康な人のダイエットのためではない。

 とはいえ、日本とは比べられないほど肥満が多い米国では、抗肥満薬を生活の質(QOL)改善のために使うのはもはや珍しくない。テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏も、体重管理のためにウゴービを使っていることを公言している。米銀大手モルガン・スタンレーは8月、米国における抗肥満薬の使用者が今後10年で5倍近く増加し、2035年までに人口の7%にあたる2400万人に達するとの推計を発表した。


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