過去にもあった〝とんでも〟ダイエットによる被害
薬でやせるといえば、約10年前、「下剤ダイエット」なるものが流行ったことがある。その名の通り、下剤を使って排便することで、体重が減ってやせるというダイエット法だ。
テレビのトーク番組で30代の女性タレントが過去に下剤ダイエットを行っていたと打ち明けて話題になったのだが、このタレントは通常は2錠飲む下剤を7、8錠飲んでいたという。下剤をダイエットに使うのは、「たくさん食べても出してしまえば食べる前と同じになり体重が増えない」という発想によるものといえるが、摂食障害や拒食症につながりかねない危険な行為だ。
当時取材した大学病院の便秘外来の医師は「便秘の人が太りやすいのは確かだが、下剤を使って多くを排便してもやせるわけではない。下剤は刺激剤なので使い続けると腸の粘膜に炎症を起こし、食べ物の吸収を悪くする。結果的に皮下脂肪や内臓脂肪を増やすことになり、逆効果」とし、「下剤をむやみに使い続けると腸内環境が乱れるから、今度はもっと太る。太らない体にするには、まず腸内環境を整えることが大事」と訴えていた。
ダイエットによる健康被害では、テレビ番組が紹介したダイエット法で食中毒が起きたこともあった。これは、2006年にTBS系の健康情報番組で紹介された白インゲン豆を使ったダイエット法だ。
番組では「炭水化物が太る原因」と強調し、白インゲン豆を数分間、炒って粉末にしたものを「炭水化物を食べても太らない魔法の薬」と紹介。「この方法なら炭水化物を食べ放題でだれでもやせられる」と説明した。
放送翌日には白インゲン豆が売り切れるスーパーが続出したが、ダイエット法を試した視聴者から激しい嘔吐や下痢など食中毒症状を訴える声が千件近く寄せられ、全国で30人近くが入院した。加熱不十分な豆を食べたことが原因で、事態を重く見た厚生労働省がTBSに文書で注意する前代未聞の出来事となった。
肥満があると、高血圧や糖尿病のリスクが高まるので、ダイエットしてやせるのは悪いことではない。ただ、ダイエットによって健康を害するとすれば本末転倒だ。釈迦に説法だが、食事と運動の生活習慣を見直すことがダイエットの基本であることは、どんなに効果のある薬があっても変わらない。それができないからさまざまなダイエット法がうまれるのだが、なんとも悩ましい。