2024年5月20日(月)

食の「危険」情報の真実

2023年11月28日

 この薬を服用している患者300人を対象にした同社の調査によると、薬による食欲減退効果で1日のカロリー摂取量が20~30%減り、甘い菓子や炭酸飲料、アルコールの摂取を大幅に減らしたという。この影響で、ピザやドーナツのファストフード店や、食料品を売るスーパーの株価が下落するとも推測している。

怖いダイエット利用での副作用

 GLP―1受容体作動薬は医師の処方箋がないと使えない薬だが、やせ薬としての使用が増え、本来の糖尿病治療のために使う薬が品薄になっている。都内で糖尿病内科のクリニックを開業する医師は「今まで使っている患者さんの分は足りているが、新規に使いたい患者さんに使えない。従来の患者さんも増量ができないので、思ったような治療ができないことがあり、困っている」と打ち明ける。厚生労働省や日本医師会は、糖尿病薬をダイエット目的で使う「適応外使用」を控えるように呼び掛けているものの、適応外使用に規制や罰則があるわけではなく、品薄状態が続いている。

 ダイエット目的での処方は、全額自己負担の自由診療を行う美容クリニックなどの医師がしているとみられる。オンライン診療だけで簡単に処方してくれるクリニックもあり、ネットでは「つらい運動なしでやせる」「飲むだけで簡単手軽に医療ダイエット」などとうたって患者を募っている。

 また、海外から薬を個人輸入して使用する人もいるようだ。ちなみに個人輸入の薬は偽造品も多く、この薬ではないが、過去に「ドクターダイエット」などの名前で販売されていた薬を個人輸入し摂取した人が急性心不全で死亡した例も報告されている。

 日本医師会がWeb検索したところ、この薬を使った医療ダイエットの広告は約44.5万件にのぼった。広告では効果ばかりが強調されるが、薬であるからには、効果だけでなく副作用もある。

 SNS上には、この薬を使った人からの「一日中吐き続けて死ぬかと思った」「嘔吐が止まらない。そのうち手が震えてガタガタしてきた」など副作用で苦しんだ経験の書き込みも散見される。また、副作用ではないが、「ビールの匂いをかぐと気持ち悪くなる」など、それまでおいしいと思っていた飲食物をおいしく感じなくなる人もいるようだ。

 判明しているこの薬の主な副作用に、低血糖や便秘・吐気などの消化器症状、急性膵炎などがある。中でも膵炎は、激しい痛みで入院治療を余儀なくされることも。

 薬を適正に使用している場合、副作用が出たときに治療費などが補償される「医薬品副作用被害救済制度」が使えるが、ダイエット目的での使用は対象外のため、医療費などの給付は受けられない。ダイエット目的で薬を処方している医師は、患者にそこまでちゃんと説明したうえで処方しているのだろうか。


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