ウクライナ侵攻を続けるロシア軍の死傷者数が急増している。英国防省はこのほど、2024年のロシア軍の死傷者数が約43万人に達し、23年の25万人からほぼ倍増したとの見方を発表した。ロシア軍が前線で展開する、〝肉ひき機〟などと揶揄される大量の歩兵を使った人海戦術が死傷者数の急増を招いているが、戦争の終結は依然見えず、今年も死傷者はさらに増大する可能性が高い。

また、死者数の約2割は開戦後に金銭などを目的にロシア軍に加わった民間出身者で占められている事実も明らかになっている。当局は報酬をつり上げ、このような「志願兵」と呼ばれる契約軍人の採用を強化しているが、短期間の訓練で軍務に投入されたとみられる50~60代の中高年の男性が多数死亡している実態も明らかになるなど、厳しい実態も浮き彫りになっている。
ロシア・ウクライナの仲介を実現させると豪語した米国のトランプ大統領も、すでにそのトーンを落としており、同氏の大統領就任後間もなく実現するとみられた停戦は極めて不透明な状況に陥っている。戦地では、ロシア軍に加わった北朝鮮兵までも多数死亡している実態も明らかになるなか、ウクライナに刃を向けたはずのプーチン政権が、自国民らを際限なく犠牲にする構図が見えている。
高齢者が〝戦死〟
リナト・クシナリョフ――1960年11月21日ウファ市生まれ。79番学校で学び、高等教育機関には進学せず。トロリーバス修繕工場、合板工場で働き、2023年11月18日に志願兵として入隊。勤勉でまじめな性格だった。2024年2月27日に軍事作戦に参加中、戦死。軍に対し忠実だった。
ジヌル・バタロフ――1958年4月15日ウファ市生まれ。1976~78年に兵役に従事した後に、農業教育機関を卒業。企業で働いたのちに引退。チェスが趣味。2023年11月に特別軍事作戦に従事する契約を結び、2024年3月に戦死。妻、3人の子供、5人の孫がいた。
ロシア中部バシコルトスタン共和国ウファ市の、戦死者を追悼するウェブサイトには、ロシアのウクライナ侵攻に携わって死亡した人々の詳細な情報が「英雄」として紹介されている。驚くのは、戦死者のなかに50~60代の人物がいることだ。年金生活者とみられる人や、複数の仕事に従事するなど、生活に困窮していたと思われる人がいる。