2025年2月11日(火)

プーチンのロシア

2025年1月22日

 高額の報酬を見せつけられ、さらに戦争参加を好意的に報じるメディア報道を連日のように目の当たりにすれば、死傷することの危険を理解していても、志願兵となる人々が増えることは容易に想像がつく。

 しかし、そのような安易な志願兵の採用活動は、ロシア各地で悲劇を生んでいることは間違いない。

死傷者が倍増

 英国防省は1月上旬、ロシア軍の兵士の死傷者は24年に42万9660人に達し、23年の25万2940人からほぼ倍増したとの見方を発表した。22年のウクライナ侵攻開始以降の死傷者数は79万人を超えたとみている。ロシア軍は前線で大量の歩兵を使った人海戦術を行っているが、そのような作戦が死傷者数の増加を招いていると指摘した。

 このような作戦で損失する人員を補填するのが、新たな志願兵だ。戦争開始後に金銭目的で軍と契約する人々で、軍務経験がないか、あっても旧ソ連時代に兵役に就いた程度の民間人が多い。

 英BBCは昨年9月、判明したロシア軍の死者数が7万人を超え、さらにその2割にあたる約1万3000人超が開戦後に軍に加わった志願兵だと報じた。この数は各地の追悼サイトや葬儀の情報などに基づいたもので、ほかに確認されていない死者も多数いるのは確実だ。

 また、ロシア軍に占領されたウクライナ東部のルガンスク、ドネツク州の親ロシア派地域の死者数も含まれていない。これらも相当数いるとみられる。

 そのようななか、ロシア政府は金銭による兵力の増強を拡大している。メドベージェフ安全保障会議副議長は昨年12月、前述のバシコトルスタン共和国ウファでの会合で、24年に国防省が契約した志願兵らの数は約44万人にのぼったと明らかにした。

 23年は30万人程度だったとみられ、その数が急増している。プーチン大統領も24年12月、「軍には1日あたり平均1000人以上が契約している」と発言するなど、国として志願兵の採用を強化している姿勢を鮮明にしている。

 バシコトルスタンと同様に、ロシア各地で今、入隊時の一時給付金の引き上げなどをてこに、志願兵の採用を強化する動きが広がっている。メドベージェフ氏はそのような取り組みは〝自治体の努力のたまもの〟だとも称賛した。各自治体が、中央政府の評価を高めるために、兵力募集に積極的に協力する構図とも映る。

 しかし、そのような状況は、自国民の人命の際限のない損失という痛ましい事態を引き起こしている。旧ソ連時代に、アフガニスタン侵攻で命を失ったソ連の人々は約1万5000人だったとされ、ウクライナ侵攻ではすでにその数倍のロシア人が死亡している。

 ロシア軍に協力する北朝鮮兵士らの多数の死亡も報じられている。詳細は不明だが、同じように無理な戦闘に投入されているともみられている。ロシアは戦争の相手であるウクライナ人だけでなく、自国民、さらに周辺諸国も巻き込み、尊い人命を失い続けているが、その終わりは依然として見えないままだ。

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