2024年7月18日(木)

プーチンのロシア

2024年7月5日

 開戦から2年以上が経過したウクライナ戦争。この戦争の趨勢を見極めるには、ロシア・ウクライナ双方の国民の「意思」を、注意深く見定める必要があります。
 開戦当初から西側諸国の厳しい制裁を受けることとなったロシア。その中で、ロシア国民は何を思うのか? 2022年モスクワの様相をお伝えします。

*本記事は黒川信雄氏の著書『空爆と制裁 元モスクワ特派員が見た戦時下のキーウとモスクワ』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
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閉店したマクドナルド(左)の隣で通常営業を続けるバーガーキング(筆者撮影、以下同)

 外資系企業や店舗の相次ぐ撤退は、ロシアの市民に対して「戦争を続ければ、ロシアは国際社会から相手にされなくなる」というメッセージを伝える狙いがあった。

 しかし、せっかく海外企業が損を被る覚悟でロシア市場から撤退しても、そのようなメッセージが伝わらなかったケースもある。現地企業が外資系企業の資本を格安で譲り受けて事業を継続したり、資本が不透明な形で乗っ取られたりしたケースがあったのだ。

 日本でも有名なうどんチェーンも、そのような事態に巻き込まれていた。

 モスクワの中心部にあり、世界的に知られるトレチャコフ美術館などに隣接する地下鉄駅、トレチャコフスカヤ。付近には、モスクワ川が緩やかに流れ、侵攻前は日本企業も多く進出していた美しいエリアだ。

 その駅から5分ほど歩いた場所にあったのが、日本の「丸亀製麺」が展開していたうどんチェーンの店舗だった。2016年には、当時の世耕弘成経済産業相がモスクワの丸亀製麺の店舗を視察するなど、日本がロシアに対して展開していた経済協力プロジェクトの有望案件だとみなされていた。私も、特派員としてモスクワに赴任していた当時は、ロシアで日本の味を手軽に楽しめる数少ない店として、家族を連れてたびたび訪れていた。

 しかし、2022年に訪れたこのトレチャコフスカヤ近くにあった店舗は、ロシアの不透明な商習慣の象徴のような店舗に様変わりしていた。店の外に掲げられた看板名は「マル」。店の中に入ると、当時と変わらない内装で、使われている食器すら同じだった。しかし、丸亀製麺を展開する日本企業はこのときすでに、ロシア国内で展開する店舗をすべて閉店することで、ロシア側の運営者と合意していたはずだった。日本側の了解なしに、ロシア側が勝手に〝激似〟店舗を営業していたのだ。

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