2026年5月31日(日)

家庭医の日常

2026年5月31日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。   
(ChayTee/gettyimages)

<本日の患者>
I.F.さん、39歳、男性、宅配便配達員。

 「先生、今度、駅ナカでオンライン診療を受けることができるんですって」

 「そうらしいです。でも、あまりにも情報が少なくて、ちゃんとした運用がされるのか心配です」

 「駅ナカで見かける個室ワークスペースっていうかブースみたいなものでしょうか。でも別にそこからオンライン診療しなくても、家からつないでもいいわけですよね」

 「まあ『忙しい現役世代が隙間時間に使える』ことがウリみたいですけどね」

 オンライン診療が変化しようとしている。

 今年4月から、「オンライン診療」に関する規定が医療法に位置付けられることになったという。そして「特定オンライン診療受診施設」というものが新たに定められた。これによって、オンライン診療の量だけでなく、質の変化も起こりそうだ。

 「オンライン診療」については、厚生労働省のウェブサイトがあるが、どこに最新の情報があるのかとても分かりにくい。この領域の研究者や専門委員でもなければうまくナビゲートして必要な情報を得ることは困難だろう。

 冒頭の私とI.F.さんとの会話に出てきた「駅ナカにある個室ワークスペースみたいなもの」が、「特定オンライン診療受診施設」に相当するようだ。オンライン診療の利用者がそこに入って、そこにあるデバイスを使って、オンライン診療を提供する医師らへインターネットでアクセスして「受診」できる。

 オンライン診療を行う医療機関も特定オンライン診療受診施設も都道府県へ届け出が必要である。「特定オンライン診療受診施設」としては、例えば公民館や郵便局などに設置したり、地域を巡回する車両をその施設として届け出て、地域住民の医療へのアクセスを容易にすることが期待されているという。

 そして、この「特定オンライン診療受診施設」の設置・開設の要件として、幅広い者の設置を認めることとして、設置者が医療従事者である必要はなく、個人でも法人でも可能であり、営利法人(株式会社等)でも設置・開設できる(保険薬局への設置は不可)としている。

 ビジネスチャンスと捉える向きも少なくないかもしれないが、本当に地域住民の利益につながるのだろうか。有益性と害の評価はどうするつもりなのか。

コロナ禍でのオンライン診療

 オンライン診療が広く議論されるようになったきっかけは、世界的にも新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染症のパンデミック、いわゆる「コロナ禍」だった。

 日本では、欧米諸国と比較してコロナ感染者数も死亡者数も桁違いに少なかったにもかかわらず、そして人口あたりの病院のベッド数は世界一多いのに「受診できない」「入院できない」「検査できない」などの「医療崩壊」と言われる状況が起きた。なぜなのか? 病院を対象とした研究や分析は様々されている一方で、診療所の果たした役割についての検討は不十分なままだ。


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