② 「コロナ感染者へのケア」
コロナ感染症の多くは軽症から中等症で、家庭医とPHCチームによって継続的なケアを提供することが可能である。コロナ感染の可能性のある人々を家庭医診療所と病院の救急外来から遠ざけるために、家庭医が主導する呼吸器クリニックを全国に130以上設置して、公立病院の発熱外来を補完した。全国的なコールセンターとオンラインでの症状チェックシステムを国内31のPHC団体が連携して導入。心配な症状が出ても、次に何をすべきかについて専門職からの適切なアドバイスをタイムリーに得られ、安心につなげた。
③ 「地域住民への通常保健医療サービスの継続」
感染への不安から人々が医療機関を受診しなくなることが過去のパンデミックで確認されており、そのことが健康リスクを増大させる。コロナ以外の急性疾患、慢性疾患、メンタルヘルス、予防医療を含む通常の保健医療サービスの継続を保証するために、家庭医診療所とPHCチームの機能をコロナ禍でもできるだけ提供し続けることが不可欠である。そのために政府が全国民を対象としたオンライン診療サービスを実装する資金を提供した。
④ 「PHC従事者とサービスの保護と支援」
病院のスタッフが保護されるのと同様に、家庭医診療所とPHC現場の保健医療従事者も感染すると、患者ケアに深刻な影響が生ずる。コロナ禍が始まった時点では世界的に供給が限られていた個人用防護具(PPE)を政府が確保し、配布した。全国の家庭医診療所の経営継続とPHCチームの継続雇用を支援するためのインフラストラクチャーへの資金も提供した。
⑤ 「地域住民と保健医療従事者へのメンタルヘルスケア提供」
オーストラリアでは家庭医とPHCチームがメンタルヘルスケアの提供に重要な役割を果たしてきた。パンデミックによる失業や事業閉鎖、孤立、隔離措置などが精神的ストレスを増幅させ、地域住民へのメンタルヘルスケアの必要性がさらに高まった。PHC従事者も含む保健医療従事者自身にもケアは必要である。そのためにオンライン診療システムを用いたメンタルヘルスケアの利用を可能にした。
日本でのオンライン診療の課題
日本プライマリ・ケア連合学会は22年6月に『デジタルヘルスが可能にするプライマリ・ケアの未来:日本のプライマリ・ケアに沿ったICTの活用についての提言』を発表した。その中で、オンライン診療の課題を3つの面から論じている(ICTとは情報通信技術[Information and Communication Technology]のこと)。
まず政策的には、対面診療に比べてオンライン診療の報酬が低く、診療所・薬局などは導入・運用コストをかけてまで導入することを躊躇してしまう。加えて、個人情報保護やサイバーセキュリティ対策などデジタル時代に即した制度整備が十分でない。
医療者側の課題としては、ICT活用法や安全性・有効性に関する情報不足、機器操作に対する不安、非対面診療による信頼関係構築やケアの継続性への懸念がある。
患者側の課題には、インターネットやデバイス利用の格差(「デジタルデバイドdigital divide」と呼ばれる)が存在し、高齢者や低所得層などでアクセスや利用が困難になる点が指摘されている。
