2025年12月5日(金)

家庭医の日常

2025年9月27日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。 
(uzhursky/gettyimages)

<本日の患者>
W.Y.くん、16歳、男性、図書室手伝い。
R.Y.さん、43歳、女性、W.Y.くんの母親、大学院生。
K.Y.さん、45歳、男性、W.Y.くんの父親、市役所職員。

 「先生、『おとなは、だれも、はじめは子どもだった』って知ってる?」W.Y.くんが私に尋ねた。

 「あ、サン=テグジュペリの『星の王子さま』だね」

 「そう。でも『そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない』んだって」

 「僕も、W.Y.に言われるまで、そのことをずっと忘れていたよ」と父親のK.Y.さん。ちょっと照れている。

 「私は、W.Y.のように、子どもからおとなになる時代にいることがうらやましいわ」と母親のR.Y.さん。何かを思い出しているようだ。

 W.Y.くん一家との年に4回の診療は、いつもだいたいこんな感じで、自由な話題で思ったことを自由に語ってもらう。気に入った本、感動したドラマや映画、季節の移ろい、美味しかった食べ物、気になる社会の出来事、そして病気についての話題が多い。何かの結論を出すことがゴールではなく、親と子という立場は忘れて、お互いの発言に耳を傾け、自分の頭に浮かんだことを率直に語ってもらう。

不登校の経験から

 3年前、中学1年の2学期初日から、W.Y.くんは学校に通えなくなった。

 W.Y.くんも、W.Y.くんの両親も、私が働く家庭医診療所とは5年近くの付き合いで、普段よくある病気のケア、健康問題の相談、それに予防接種などで受診していた。それが幸いして、この時も、W.Y.くんの不登校を心配する母親のR.Y.さんがすぐ一家を連れて相談に来てくれた。

 家庭医の強みは、普段から患者とその家族を知っていることだ。W.Y.くんにとっても、いつもの家庭医に受診するということで、あまり警戒することなく来てくれた。同時に、持病の気管支喘息のフォローアップもできた。

 最初に、親子3人一緒に面談、W.Y.くんだけとの面談、そして両親それぞれ別々に面談をして、W.Y.くんにいくつかのスクリーニング検査と身体診察、最後に血液検査を少し追加した。


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