2022年6月30日(木)

家庭医の日常

2022年6月22日

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葛西龍樹 (かっさい・りゅうき)

福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座主任教授

1984年北海道大学医学部卒業。北海道家庭医療学センター設立および所長を経て、2006年から現職。英国家庭医学会 最高名誉正会員・専門医(FRCGP)。日本プライマリ・ケア連合学会監事。著書に『医療大転換 ─日本のプライマリ・ケア革命』(ちくま新書)など多数。

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(Peter Dazeley/gettyimages

<本日の患者>
K.C.ちゃん、5歳男児。
S.K.さん、70歳、K.C.ちゃんの祖母。

 家庭医は、当番になっていない夜間・休日でも、自分が担当する患者やその家族から病気や健康問題について電話で相談をされることがたまにある。時間外の診療所の利用方法についてはすでに案内しており人間関係の築けている人たちがほとんどなので、電話してきた方もこちらのプライベートな時間に邪魔してしまったことを申し訳なく思っている。それでも電話をかけてきたのだから、そうした相談はのっぴきならないことが多い。

 医学的に重症であることもあるし、重症ではないが心配や不安が大きくなっていることもある。できるだけ対応することを心がけている。先週土曜日の夜9時過ぎにK.C.ちゃんの祖母であるS.K.さんからかかってきた電話もそんな相談の一つだった。

おばあちゃんのバックドロップ!?

「先生、夜分にすみません!でもどうしたら良いかわからなくって」

「大丈夫です、S.K.さん。落ち着いて話して下さい。どうしましたか」

「20分ぐらい前に孫のK.C.と娘の家のリビングで遊んでいたんです。そしたら孫に突然後から抱きつかれて、後へ引っ張られ、バランスを崩して孫を抱えたまま2人で床に仰向けに倒れちゃったんです。

 一瞬のことで避けることができず、私の体重で孫を床に勢いつけて押しつけた形です。頭も床にぶつけたと思います。孫は痛いと言って泣き出しましたが、しばらくして眠ってしまいました。

 今夜小児科の先生がいる救急外来はA大学病院だけだそうです。でも車で30分はかかります。このまま様子を見ていて良いかわからなくて。それで先生に相談しようと思ったんです!」

 S.K.さんはそこまで一気にしゃべり続けると、「ああ大変!」「どうしましょう!」「私が悪いんです」と心細そうなつぶやきを繰り返した。

 K.C.ちゃんは普段は活発な5歳の男の子である。母親のN.C.さんが第2子を妊娠していて、2週間前から切迫早産のため入院が必要になったので、K.C.ちゃんの世話も含めた家事もろもろの手伝いを頼まれて、S.K.さんは2週間前から娘(N.C.さん)の家へ来ているのだ。K.C.ちゃんが生まれた時にもお手伝いに来ていて、その後も時々私のいる診療所へ家族と一緒に受診したことがあるので私とも顔馴染みになっている。

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