2024年4月24日(水)

家庭医の日常

2022年6月22日

対処行動別に症状を提示する

 私事で恐縮だが、NHK『きょうの健康』の番組に出演することになった。先日スタジオでの収録があり、放送は来月(7月)となる。さらに、原稿として寄稿した番組の内容は、7月号のNHKテキスト『きょうの健康』に掲載されている。

 私が担当したテーマは「むくみ」である(「むくみ」のケアについてはまた後日この『家庭医の日常』でも取り上げたい)。「ゆる体操」という手軽にできるセルフケアも実演しているので、のぞいてもらえれば幸いである。

 『きょうの健康』は毎週さまざまなテーマでその分野の専門家が番組に出演しテキストを執筆している。ただ、そのほとんどが(一般の人が理解しやすいように平易な言葉を用いてはいるが)疾患の診断と治療についての専門的解説がメインである。疾患のことはわかるようになるが、実際に症状が出てきたらどのタイミングでどのぐらい急いで医師を受診したら良いかが分かりづらい。

 そこで私は、家庭医として他の専門家とは異なるアプローチで番組と原稿を構成させてもらった。「こんな症状があればこうしたら良い」という、一般の人々にとってほしい対処行動別に症状を提示したのである。

 対処行動は、(1)すぐに救急車を呼んで病院へ行く、(2)その日のうちに医療機関を受診する、(3)数日以内に医療機関を受診する、(4)セルフケアをしながら様子をみる、の4段階に分類した。構成にあたり臨床研究のエビデンスを含めてさまざまな情報源を吟味したが、英国国民サービス(NHS)が一般市民向けに健康問題別に情報提供しているインターネットサイト『Health A to Z』の質が高くてとても参考になった。

子どもの頭のけがの対処行動別症状

 K.C.ちゃんのケアに戻ろう。ここでは電話で症状を確認して対処行動をアドバイスすることになる。ここでも、NHSの『Health A to Z』が参考になった。

 まず、すぐに救急車を呼んで病院へ行ってもらう必要があるか。これは、気を失ってないか(寝ていたら起こしてみる)、けいれんがないか、1メートル(階段なら5段)以上の高さから落下してないか、視力や聴力に問題ないか、眼の周りや耳の後ろにアザがないか、耳や鼻から透明な液体が出てないか、耳から血が出てないか、体で力が入らないところがないか、立ったり歩いたりできるか、話ができるか、頭にあきらからな変形や傷がないか、交通事故でないか、などを確認する。

 K.C.ちゃんはすべて大丈夫だった。「おばあちゃんのバックドロップ」の高さは1メートルぐらいだが、S.K.さんにつかまって崩れるように倒れているので、真っ逆さまに落下した距離とは言えない。ちなみに救急医療の現場で用いる「小児に頭のCTを検査するかどうか」の判断ルールの1つは、2歳以上の小児の場合1.5メートル以上(2歳未満では0.9メートル以上)の落下を目安にしている。

 次に、その日のうちに医療機関を受診する必要があるか。これは、今は目が覚めていてもけがの後で気を失っていなかったか、嘔吐がなかったか、痛み止めが効かない頭痛がないか、いつもと変わった様子(泣き続けたり、過敏になっていたり、周囲に関心・興味を失っていたり)はないか、記憶に問題ないか(小さな子どもで確認するのはむずかしいが)、などを確認する。


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