いよいよ大型連休に入る。楽しみなことも多いだろうが、連休明けはメンタル不調を訴える人が例年多くなる傾向にある。
「メンタル不調」は、ストレスや睡眠不足など、様々な要因から起こり、個人だけの問題ではない。健康に支障をきたす前にまずは実態を知っておくことが重要だ。この時期に読んでおきたいメンタルや健康に関わる記事を紹介する。
<目次>
・「無意味な薬はやめるべき」精神科医が勧める減薬・断薬に必要な身体の下準備(2024年5月16日)
・不眠症治療で日本が薬物療法を重視する理由(2023年11月25日)
・霞ヶ関の官僚も「生身の人間」、もうこれ以上理不尽な人権侵害はやめよう 精神科医がやるべき治療は薬の処方ではない理由(2024年2月13日)
・実は怖い「メンタル不調の自宅療養」 休職は解雇猶予(2023年7月9日)
・睡眠不足で日本の経済損失は15兆円という衝撃 あなたの睡眠は大丈夫?時代は働き方改革から〝休み方改革〟へ(2024年1月30日)
・「働く人のうつ」は「うつ病」ではないというこれだけの理由(2023年1月7日)
「無意味な薬はやめるべき」精神科医が勧める減薬・断薬に必要な身体の下準備
以前、筆者が『うつの8割に薬は無意味』(朝日新書)という本を書いた際、一般読者からも、精神科医仲間からも、「うつを過剰診断した結果の偽性『うつ』を含めるなら、その『8割に薬は無意味』と言っていいが、国際診断基準で厳密に『大うつ病』と診断された場合、『8割に無意味』は言い過ぎだろう」と言われた。
そうではない。驚くべきことに、「大うつ病」の8割に薬は無意味なのである。拙著の冒頭で「プラセボ効果ではなく、ほかでもない抗うつ薬で治るのは5人に1人」との見解を示しているが、その根拠は「大うつ病」に関する論文から得られている。
つまり、うつの諸症状の「5つ(またはそれ以上)が同一の2週間に存在」し、かつ、それらが「ほとんど1日中、ほとんど毎日」出現して、結果として「大うつ病」と診断されるような本格的なうつ病に限定した研究においてすら、その「8割に抗うつ薬は無意味」なのである。
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不眠症治療で日本が薬物療法を重視する理由
H.M.さんは、その名前を聞けば年輩の日本人なら大抵は知っている、かつて某テレビ局でアナウンサーをしていた女性である。現役引退後もさまざまなところから司会や講演、コメンテーターを依頼されて忙しかったが、「さすがにもう潮時」と考えて身辺整理し、半年前に、比較的静かな郊外のこの町へ転居してきた。敬愛していたH.M.さんの祖母ゆかりの地とのことだ。
私が働くこの診療所を初めて受診した時に、「持病があるので、インターネットで転居先の医者探しをしたんですよ。逆マーケティング・リサーチね。そしたら、この町に先生がいるじゃないですか。もう、びっくりするやらホッとするやら大変でした(笑)」とH.M.さんから言われて、顔と名前を見合わせ、こちらも大いにびっくりしたのだった。
あれはもう20年以上前、私が北海道で家庭医の専門研修プログラムを立ち上げてしばらく経った時に、当時札幌支局にいたH.M.さんから取材を受けたことがあったのだ。
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霞ヶ関の官僚も「生身の人間」、もうこれ以上理不尽な人権侵害はやめよう 精神科医がやるべき治療は薬の処方ではない理由
筆者が「霞が関で殉職しない方法 睡眠奪う労働は人権侵害」を書いて以降、霞ヶ関、永田町界隈から多くの反響をいただいた。そのなかには、「官僚の現状について、理解していただいてありがとう」という肯定的な意見もあったが、メンタルクリニック受診歴のある元・職員からは、「薬でごまかすだけで、頼りにならなかった」という意見も寄せられた。
筆者は、すべての精神科医を弁護する立場にはないが、ひとこと、言い訳を申し上げておく。精神科は元来、「精神障害者」御用達であった。一方、霞ヶ関の官僚諸氏は、いかなる意味でも「精神障害者」ではない。当然ながら、誰一人「患者扱い」など求めていない。ここにミスマッチの原因がある。
筆者が霞ヶ関人を診ることができるのは、環境に恵まれたからにすぎない。外勤先は、国家公務員共済組合連合会虎の門病院出身の精神科医(現・理事長)が立ち上げたクリニックで、同院精神科初代部長が院長を務めた時期もあった。その後、理事長の高校の後輩で、獨協医科大学埼玉医療センターの筆者が非常勤として関わり、医局員を送りこんだ。
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実は怖い「メンタル不調の自宅療養」 休職は解雇猶予
現在、メンタル不調により休職中の人は、「休職とは復職を前提とした解雇猶予」であると聞いたら、おちおち休んでいられない気分になろう。実は、会社はそう考えている。
知らないのは、本人だけである。否、もしかすると、メンタルクリニックの主治医も知らないかもしれない。しかし、事業者と産業医は知っている、それはあくまで「解雇猶予」であるということを。
これは、患者にとって衝撃的である。主治医は「焦ってはいけない。まずは、ゆっくり休みましょう」と言った。確かに「仕事のことを忘れて、ゆっくり休みましょう」と言ったはずである。
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睡眠不足で日本の経済損失は15兆円という衝撃 あなたの睡眠は大丈夫?時代は働き方改革から〝休み方改革〟へ
24時間戦えますか──。平成が幕を開けた1989年、栄養ドリンクのCMで使われたこのフレーズが新語・流行語大賞にランクインした。バブル経済を支えたビジネスマンたちの姿勢や気概を象徴する言葉といえるだろう。
そこから時代は一変した。1カ月後に令和への改元を控えた2019年4月1日、労働者が多様な働き方を選択できる社会の実現を目的に、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が施行された。時間外労働の上限規制がなされ、年次有給休暇の取得が義務付けられるなど、「働き過ぎ」を防ぐことにより労働者の健康を守ることに重点が置かれることとなった。
先立つ16年、米シンクタンク「ランド研究所」が興味深い試算を公表している。睡眠不足による日本の経済損失が年間約15兆円に及ぶというものだ。事実、経済協力開発機構(OECD)による21年の調査でも、日本人の平均睡眠時間は最も短かった。
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「働く人のうつ」は「うつ病」ではないというこれだけの理由
「働く人のうつ」は、なかなか治らない。薬を飲んでも、認知行動療法を受けても治らない。脳を磁気で刺激しても、休職しても、生活習慣を整えても治らない。リワークに参加しても治らない。これらはいずれも無意味ではなく、一定の効果はある。それでも治らない。
なぜか? 実は、治らないのには、理由がある。治らなくて当然である。それは、治すべき病気がそこにないからである。「働く人のうつ」は、「うつ病」ではない。「うつ病」ではないのだから、うつ病の治療をしても治るはずがない。
日本では「働く人のうつ」を「うつ病」と見なしがちだが、海外、とりわけ英語圏なら「バーンアウト」(燃え尽き症候群)と呼ぶであろう。これは単なる呼称の問題ではない。前者なら治療の対象になるが、後者なら働き方、働かせ方の問題となる。この違いは決定的である。
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