こちらもK.C.ちゃんはすべて大丈夫だった。ただ、けがをした後すぐに症状が出ないこともあるので、24時間は注意して様子を見る必要がある。翌朝私から電話をしてその後の様子を確認することにした。
必要な〝他のけが人〟への配慮
「ところでS.K.さんは大丈夫ですか」
「え?」
「さっきS.K.さんが『私が悪いんです』なんて言っていたので、気になっていました。K.C.ちゃんに抱きつかれてバランスを崩して倒れたことをあんまり自分のせいにして責めないで下さいね」
「でも・・・」
「こうして何かあれば私に電話してくれているし、ずっとK.C.ちゃんのお世話をしてくれているんだから、N.C.さんも安心して入院することができるんです。N.C.さんも感謝していますよ」
「そうだといいんですが」(S.K.さんの声が若干明るくなってきた)
「そうですよ。NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)で重要な役割を果たすヒロインのおばあちゃんは大抵大女優じゃないですか」
「先生って時々変なことを言いますね、ははは」
このような場合、子どものけがに注意が集中するあまり他にけがをしているかもしれない人(この場合はS.K.さん)のことを忘れがちだ。最後は若干すべったが、自責の念に苛まれていたであろうS.K.さんを気遣い、それから彼女自身に転倒による心配な症状がないことを確認した上で、再度すやすや寝ているK.C.ちゃんを見てもらった。
その夜はそれ以上の連絡はなく、翌朝の電話でK.C.ちゃんとS.K.さんが元気であることを確認できた。