2025年の大阪・関西万博に関して、前回「過去の万博から学べ!大阪・関西万博を経済活性化とインバウンドの起爆剤にするために必要なこと」は筆者が訪問する前にマクロな視点からその意義を記述した。今回開幕から10日後に実際に万博を訪問してみて、実に興味深いイベントであると体感した。
個人的には素直に楽しめるイベントだったのだが、自治体、観光地域づくり法人(DMO)、観光ビューロー等にとっては、自らの地域資源を世界にどう魅せていくかを学ぶ絶好の機会でもあると感じた。特に、各国のパビリオンはそれぞれの文化・価値観・観光資源を凝縮して表現しており、地方観光戦略に参考となる視点が満載である。まずはいくつか個別のパビリオンから学べる点を確認しよう。
各国が独自の切り口で魅力を発信
トルコパビリオンは、「文明の黄金時代(Heyday of Civilizations)」をテーマに、アナトリアの豊かな歴史と文化を多面的に表現している。トルコと日本の国旗に共通する「太陽と月」の象徴を通じて、昼と夜、過去と未来、自然と人間の調和を象徴的に描き出し、外観には地中海と黒海の波を模した縦型のデザインが取り入れられており、トルコの地理的多様性と文化的深みを可視化している。
本来は独自設計の「タイプA」パビリオンを計画していたが、国内の選挙や地震復興への対応を優先した結果、万博協会が提供する簡易型の「タイプX」へ移行するという柔軟な対応を取ったと聞く。この決断は、限られたリソースの中で国際的な発信力を維持するという観点から現実的だろう。
内部では、来場者はトルコの伝統音楽の生演奏や歌に触れながら、世界三大料理の一つとされるトルコ料理を味わうことができる。加えて、トルコ航空(Turkish Airlines)のビジネスクラスのキャビンを模した展示も設けられており、実際のキャビンアテンダントがその魅力を紹介している。
この展示は、単なる企業PRを超えて、トルコを訪れるという「旅」そのものの体験価値を強く訴求するものであり、観光誘致におけるアプローチとして面白い。訪問者はトルコへの空の旅の魅力を臨場感もって体感することができ、旅行先としてのトルコへの関心喚起に直結する構成となっている。
オーストラリアパビリオンは「Chasing the Sun ― 太陽の大地へ」をテーマに、自然と文化の融合をデザインに取り入れ、ユーカリの花をモチーフにした外観で多様性と活力を象徴している。建材の再利用など持続可能性にも配慮し、環境意識の高さを発信。内部では映像や香り、音を通じた没入型体験により、オーストラリアの自然や先住民文化を五感で伝えている。
これは基本的にはいくつかの大型スクリーンを連ねているのだが、うまく配置しているので、全面スクリーンにしなくても比較的360度感覚を味わえるように工夫されている。コスト効率が良いとみられる。