大阪に滞在していると、知り合い同士のような雰囲気に包まれることがある。
「席詰めたるから、こっち座りや」
「寒いやろうから、カイロ使って」
取材中、小誌記者がまちの人たちにかけられた言葉だ。
この大阪の持つ雰囲気はいったい何なのであろうか。京阪神で広く販売される、主に飲食店の情報を集めた『Meets Regional』(京阪神エルマガジン社)は、そのような大阪の雰囲気を詰め込んだような雑誌だ。
六代目編集長を務める松尾修平さん(46歳)は、週に5日以上まちに出歩き、飲食店の店主やそこに集う人たちとの交流を欠かさない。
「かつて、中央区博労町に会社の拠点があったとき、雑誌で隣町の南船場の魅力を取り上げてまちが盛り上がった経験があります。以来、取材以外でもまちに出て、実際の雰囲気を知ることを大切にしています」
常に大阪のまちと関わり続ける松尾さんは、その雰囲気についてどのように思っているのか。
「大阪人の独特の距離感からくるこの雰囲気は、大阪ならではのものだと思います。知らない人でも、息子のように接してくれることもある。大阪の面白さは、まちの人たちがつくりあげていると思います」
松尾さんの写真を撮影した中央区日本橋にある鉄板焼き酒場「鉄板野郎!」に小誌記者が訪れた際にも、毛布の貸し出しや曲のリクエスト、軽快なコミュニケーションが繰り広げられた。「大阪を知るには、人の距離感が味わえる夜の飲食店に行くと、わかりやすいのかもしれません」(松尾さん)。