〝勝手に〟始めた活動
夜の市場で大阪を発信
そんな大阪の夜のまちの魅力を、4月から始まる「大阪・関西万博2025」を契機として観光客に伝えようとしている人たちがいる。
人間(大阪市西区)という目を引く名前の会社で「変なプロデューサー」を務め、万博をきっかけにまちを盛り上げるチーム・demoexpo代表理事の花岡さん(43歳)は話す。
「万博がきっかけで大阪に来て、道頓堀などの有名な観光地に行くだけではもったいない。万博で各国のパビリオンが存在するように、私たちは『まちごと万博』と称して、大阪のまちでパビリオンをつくることにしました。その中でも大阪の夜に注目して、〝ナイトタイムエコノミー〟を盛り上げようと、夜のパビリオンというプロジェクトを始めました」
ナイトタイムエコノミーとは、日没から日の出までに行われる経済活動のことで、夜間の活動の中で地域の魅力発信、消費拡大につなげる。米ニューヨークでは地下鉄が24時間運行して夜8時開演のブロードウェーを深夜まで楽しむことができたり、オランダのアムステルダムではダンスフロアを24時間営業したりと、海外では活発だ。先進地とされる英国での経済規模は、日本円で7兆円超だという。
日本でも、京都府では寺社の夜間特別拝観を開催し、神戸市の水族館では夜間開館を行うなど、様々な取り組みをする地域もある。
しかし、東京・渋谷のハロウィンの規制など、安全面や地域経済への悪循環などの課題があり、日本では広く浸透していない。花岡さんは夜のパビリオンの中で、EXPO酒場という人が集まる場を設定し、大阪の夜を盛り上げたいと話す。
「EXPO酒場は、外国人観光客や、日本人観光客、そして地元の人が交流できる場所にしていきたい。今後、スナックツアーや、バーの名物店長などのおもしろい人たちを紹介する取り組みなども行う予定ですが、まずはこの場から、夜の大阪を広く知るきっかけとなれば嬉しいです」
小誌記者が3月に参加したEXPO酒場のプレイベントでは、スナックのママが外国人観光客に向けて行うという「スナッククイズ」を披露しており、場を盛り上げていた。
観光ビジネスに詳しい早稲田大学大学院経営管理研究科教授の池上重輔さん(58歳)は、ナイトタイムエコノミーについてこう話す。
「森記念財団の23年の調査によると、日本は世界の都市総合力ランキングで3位にもかかわらず、ナイトライフ充実度は30位と低い。日本のナイトタイムエコノミーの需要はとても高いと思います。特に、カラオケ居酒屋などは言語を介さずに楽しめるため、外国人観光客に拡張しやすいでしょう。他にも、屋台文化、美術館、動物園など、大阪にあるものは全て活用できる。夜といえば飲みの場を連想しがちですが、10年後には65歳以上の人口が3割を超え、高齢化が進む中で、お酒以外の場を求めている人も多くいるはずです」

