花岡さんが夜のまちから大阪の魅力を知ってほしいと動き出した背景には理由がある。
「観光ガイドに載っていない大阪の〝人〟の魅力を紹介したいと思いました。この〝人〟による魅力は、無形で定量化しにくく、ビジネス向きではない。コロナ禍も相まって、利便性や効率を重視した現代では消えていきかねない文化です。観光は一過性のものに対し、文化は長期的なもの。その見えにくい魅力的な文化を押し出していきたいと思いました」
そんなdemоexpoの活動は、万博に向けて、FМ802、関西大学、阪急電鉄など多くの連携企業が名を連ねるが、開始当初は万博とは全く関係のない活動だった。
「万博と連動したプロジェクトではありますが、自分たちはあくまで民間として、〝勝手に〟始めました。大阪は、〝民の力〟が強いまちです。傍観するだけではなく、自分で考えて行動していく力、そしてそれを楽しめる土壌があると思います」(花岡さん)
そんな〝勝手に〟始めた活動は、さらに広げていく予定だという。
「夜の交通手段などの課題も踏まえつつ、ナイトミュージアムやナイトズーなど、様々な方向にも広げていきたい。日本では、ナイトタイムエコノミーはまだ一般的ではないですが、大阪の魅力をもっと知ってもらうきっかけにしたいですね」
〝まち〟で盛り上がること
万博を機に新しい変化を
しかし、大阪の夜の飲食店も、「以前に比べ盛り上がりに欠けるのではないか」と松尾さんは言う。
「今はだいぶ戻りましたが、コロナ禍を経て、営業時間の短縮の影響などによってまちから人が減ったように感じています」
総務省統計局の家計調査結果によると、大阪市の17~19年における一般外食の年間平均金額は16万9305円で、52ある地域のうちの12位であった。一方、コロナ禍中の20~22年には12万7859円で18位と下落、コロナ禍が収束してきた22~24年に至っても16万2534円で21位と、いまだその余波が残る。
しかし、大阪人たちは前を向く。
冒頭の「鉄板野郎!」のスタッフ、〝がんちゃん〟こと岩男悠希さん(33歳)は話す。
「今度〝ウラなんば〟の若手の集まりがあって、みんなでさらにこのまちを盛り上げていくつもりです。まちの一体感があるのも大阪ならではかもしれません」
元々、店舗がある難波〜難波千日前〜日本橋近辺の〝ウラなんば〟という呼び方も、「鉄板野郎!」を始めとしたまちの店主たちが考えた。『Meets Regional』での発信も合わせ、今ではタクシー運転手に言っても伝わるまで浸透している。
「万博は起爆剤に過ぎない」──。花岡さんも、大阪の未来を考える。
「万博が終わった後も取り組みを続け、大阪のまちや文化を楽しむきっかけ作りをしていきたいですね」
有形・無形の多様な大阪の魅力。ナイトタイムエコノミーを通じて、〝統合〟・〝ミックス〟できれば、大阪はもっと面白くなるはずだ。
