東京・日本橋人形町にある刃物店「うぶけや」。創業は1783(天明3)年、243年前のことです。現在のお店は地下鉄日比谷線、浅草線・人形町駅のすぐそばで、ビルに挟まれた和風建築はひと際目立ちます。9代当主の矢﨑大貴さん(36歳)にお話を聞きました。
「初代である㐂之助が、大坂で創業しました。鍛冶職人だった㐂之助が打った刃物は『うぶ毛でも剃れる、切れる、抜ける』と、評判になったそうです。だから今でも、包丁、鋏、毛抜きが看板商品となっており『ご縁と毛抜きは切れてはいけない』と、代々言われております。1800年代、明治維新前に江戸店として店を構え、現在に至ります」
2代目からは「職商人」という形に業態が変化したそうです。
「天下泰平の世の中になったので、武具などをつくっていた鍛冶職人のつくる品物が包丁などの生活用品にシフトしました。今でもそうですが、そのような『鍛冶職人』がつくった半製品を、私たちが研いで、製品にしてから販売しています。いわゆる分業制です。一丁一丁私たち自身で研ぎますから検品の仕事も兼ねることができ、納得いくものをお客様にお渡しして、ご購入後のメンテナンスも承ることができます。そのため昔からの刃物屋の多くは職商人の形態をとっております。ただ、『鍛冶職人』さんは、現在かなり減ってきているので、それが今後の課題となっております」
取材している最中、お客様が年季の入った鋏と包丁を持ってきました。早速、矢﨑さんの見立てがはじまりました。うぶけやでは自社製品ではない刃物の研ぎも行っています。
それにしても、包丁などは研ぎながら使ってどのくらい使うことができるのでしょうか。
「包丁には様々なスタイルがあり、この包丁は真ん中に鋼があって、両側から地金で挟み込む構造になっています。そのためこの包丁は真ん中の鋼がある限りは、研いで使うことができます。ただし、研ぐにつれだんだんと細くなり刻みにくい形になっていきますので、ご用途は変わっていくかと思います。最初は刻みに向いていたものが、いずれは皮むきとしてお使いやすくなっていきます」
