2025年12月6日(土)

家庭医の日常

2025年9月27日

 この時点で、適応障害と軽いうつ病が合併している可能性が考えられた。親子3人と私を加えた4人で相談し、病気の程度が重症でなく自殺や自傷行為のリスクが高くないことから、まずこの家庭医診療所に定期受診しながら心理的介入を導入する方針となった。

 精神科医を受診することには3人とも抵抗があったので、私の知っている児童精神科医に私から電話して、W.Y.くんの状態を伝えて今後のケアの方針についてアドバイスをもらうことで3人に納得してもらった。W.Y.くんの学校の担任教諭に連絡することは3人から承諾してもらえたので、まず電話して話を聴いた。児童精神科医および学校との連携は、現在も継続している。

子供のメンタルヘルスをどこで相談するか

 「子供のメンタルヘルスについて相談するところがない」と言われている。日本では、大人でも精神科医を受診するのはハードルが高い。若干ソフトな響きの「こころのケア」と書かれたクリニックの方が行きやすいように感じる人もいるが、そこでのケアの内容や質はどうなのだろう。

 子供の場合はさらに難しい。精神科医の中でも、子供を専門にしている数少ない児童精神科医はどこにいるのだろう。

 2023年4月に発足した「こども家庭庁」の設立準備にあたり、同年3月に開催された大臣と有識者との意見交換会で提出された資料が内閣官房から公開されており、日本における子供のメンタルヘルスに関する最近の状況を知ることができる。

 その中で、専門的医療機関では発達障害が疑われる児童生徒の初診待ち時間が長期化しており、半数以上の医療機関が3カ月以上、最長で約10カ月待ちの例があること、そして初診待ちしている患者数は約4割の医療機関で50人以上、最大で316人の例があることが示されている。深刻なサービス供給不足だ。


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