今年は、この10年で一番花粉量が多いそうだ。花粉症は、その名前が付く前からあったが、その時はほとんど「鼻炎」と診断された。当時は、原因がはっきりしないので、医者の処方は、あまり効かなかったとのこと。
世界的に流行して3年目のコロナウイルスだが、完全に封じ込めることができない要因の一つに、人間はまだまだウイルスのことを知らないことが挙げられる。同様に、花粉症に関してもまだまだ解明されていないことが多いし、新しい情報が更新されていく。花粉症原因物質研究の第一人者である王青躍・埼玉大学教授を講師に行われた「Dyson 花粉対策セミナー」の花粉情報とともに、掃除機、空気清浄機を選び方、使い方をレポートする。
ウイルスと近い大きさの「粉砕花粉」
花粉症の原因として挙げられている「スギ花粉」。2月になると花粉の飛散が始まり、天気予報でも飛散予報を流される。花粉症の症状は、予報と整合性が取れることもあるが、かなり違う日もある。王教授はその点に注目し、花粉の状況をいろいろな観点から調査した。その結果、花粉症を引き起こす「アレルゲン物質」は、花粉の表面に少し、そして花粉の中に多量に含まれることがわかった。花粉はアレルゲン物質を含むが、割れて中身がでない限り「花粉量=アレルゲン物質量」ということはできないということだ。
花粉は割れる。今までは、よくアスファルトに落ちた花粉が、重いクルマに轢かれ、バラバラになると言われてきた。しかし、王教授は、花粉が水分を含むと膨張して割れることを突き止めた。ほんの少し、霧雨があればいい。その時見せてもらった写真では、26.4マイクロ径の花粉は、32.6マイクロまで膨れていた。そして破裂する。
花粉由来のアレルゲン物質が出てくる。サイズは、マイクロサイズ、ナノサイズとサイズ、いろいろなサイズにバラバラになる。王教授は、これを「粉砕花粉」と呼んでいる。このレポートでも以降「粉砕花粉」と呼ぶ。こうしてアレルゲン物質は、人に取り込まれやすくなる。これなら「花粉量=花粉症」ではないことの説明が付く。
さて、花粉症対策を考える時、物質のサイズが重要だ。大まかに言うと、「スギ花粉=30マイクロメーター(以下 マイクロ。1マイクロ=1000ナノ)」。 肺胞にそのまま入り、害を与えるといわれているPM2.5は、2.5マイクロなので、花粉はかなり大きいが、粉砕花粉は、最小で0.1マイクロのオーダーになり、ウイルスのサイズに近い。
室内の花粉除去
外はともかく、家の中まで花粉に悩まされたくはないと、誰もが思う。しかし、飛散時は、換気をする限り、花粉と粉砕花粉は入り込んでくる。これを除去できるのが、掃除機と空気清浄機だ。これまでは、掃除機は落下した花粉を、空気清浄機は空気中の花粉を除去すると、言われてきた。
そこで王教授は、掃除機のチェックをしてみた。一つの大きなポイントは、掃除機に吸い込まれると、花粉は粉砕花粉になるのか? ということだ。確認した結果、99.5%くらいは壊れなかったとのこと。花粉の殻はかなり丈夫といえるが、ごく微量でも発症する人がいるため、必ずしも安心できるレベルではないとの見解だ。
今の掃除機の上位モデルは、閉め切った室内でも使えるように設計されている。具体的には、排気フィルターを付けている。しかし、そこに「規格」はない。どのサイズまでを濾しきるのかは、メーカーの判断となる。粉砕花粉の大きさに対するためのフィルターで、家電で使えるフィルターは「HEPA(へパ)フィルター」しかない。しかし、その分、高価格が高くなる。
さて、最後の砦になるのが、空気清浄機だ。コロナ禍において、飛まつを除去できるように、ここ2年でずいぶん進化した。さすがに、くしゃみ、咳で飛ぶ高速飛まつ自体への対応はスピード的に難しいが、大気中の飛まつなら十分対応できる。自ら、気流を作り出し、HEPAフィルター、もしくは、同等性能のフィルターで、こちらも濾し切ることができる。
花粉は外から持ち込まれるわけだから、空気清浄機は、扉もしくは窓の近くに設置するのが良い。そして花粉飛散前にすみずみまで大掃除する。この際、空気中に粉砕花粉が飛んでも、時間さえあれば空気清浄機がきれいにしてくれる。大掃除の後は効率を考え、しばし部屋中央に設置するのが良いだろう。平常運転になった後、扉か窓に近い定位置に戻す。