東武日光線新大平駅(栃木市)から歩いて5分のところに、日立ジョンソンコントロールズ空調(以下、日立)の栃木事業所がある。ここの工場では、70年以上ルームエアコンを含む空調設備を作り続けており、今でも現役続行中だ。それどころか、2023年国内用エアコンのトップモデル「日立 白くまくん プレミアムXシリーズ」を作っている。なぜ、古くからの工場で、トップモデルを作り続けているのか?
メイド イン ジャパンでなく、メイド イン 栃木
11月中旬、トップモデルの初出荷を取材した。夏の終わりに、その年のモデルが終わりになるエアコン。初出荷は秋の終わり頃になる。遅くとも、12月のボーナス前に店頭に並ぶ。コロナ禍、トランジスタ不足で、出荷が大きく出遅れるメーカーもあるが、大型家電とボーナスは親密な関係にある。出遅れると大きく売り負けにつながってしまう。
初出荷は、縁起を担ぐため、お偉方も全員着て参加する。「お客様の役に立ってこいよ」「たくさん売れてこいよ」「故障するんじゃないぞ」、といろいろな願いがこもった眼で見送られるのだ。
納期通りに出荷するのは、工場の役目だが、新製品ともなると、初めてという工程もあるので、予定通りというわけにはなかなか行かなかったこともあるだろう。それらの思いを載せたトラックには大きく「メイドイン栃木」と記されている。
エアコンは地産地消がベスト
1990年代後半、グローバル化が活発化して以降、工業製品は安いエリアで作り輸入するのが当たり前と化した。ところが新型コロナウイルスの蔓延で、グローバルだけに頼るととんでもないことになることが露わになった。
典型的だったのはマスクだ。ほぼ全量輸入していたところに、中国が輸出ストップ。この時期どんなマスクでも高値で売れた。危機感を持った日本メーカーは、国内生産を始める。先頭を切ったのは異業種参入のシャープだった。続いては、アイリスオーヤマ。こちらは中国ラインはそのまま、国内ラインを追加立ち上げた。原反も国内生産で、完全な国内生産だ。
その時、安心品質は「メイドインジャパン」。なぜ、エアコンは、ジャパンではなく栃木なのか?
地産地消の意味
さて、日立の担当者に、どうして国内生産にこだわるのか? と質問したところ、「エアコンは、即効性が重要ですから」との答えが返って来た。例えば、中国生産だと、作って店頭に並べるのに約1カ月かかる。だが、国内だと、最大で1週間。初夏の暑さの感じ方で、売れ行きがすぐ変化する上、その夏で売り切らなければならないエアコンの需給は担当泣かせだ。即効性がないと市場の動きを予測しながら調整することは困難だ。
店頭に並べるまでの時間が短いことで、こうした「困難さ」を軽減することができる。また、トラブル対応も容易だ。最近のエアコンは、温度管理&除湿だけでなく、換気、空気清浄機能など、機能を貪欲に取り入れている。当然、トラブルも増え、生産現場にフィードバックする必要性も出てくる。だから、日立は「地産地消」を重視するというわけだ。一理あるが、まだ「栃木」は見えてこない。