2022年10月3日(月)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年9月18日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 ロシアの侵略戦争開始以降、日本経済は沈下の一途。円安や、ガソリン価格の動向は見通しが立たない。人件費が安い海外生産主流となっていた状況にも変わりはじめた。アイリスオーヤマは、5月に他メーカー同様、製品の値上げを発表したが、それだけでは吸収できない製品について、国内での生産開始を決めた。

埼玉県深谷市にあるアイリスオーヤマの埼玉工場

空気を運ばせるな

 最近は、家電メーカーとしても、徐々に名が通り始めたアイリスオーヤマ。彼らが扱っている製品は家電だけではない。同社の母体となっているホームセンターにある製品すべてを何らかの形で手掛けている。

 ホームセンターで扱う代表的な製品に、収納ボックスがある。大きなプラスチックケースは、あまりにも嵩張るので、売り場面積の大きなホームセンター以外、ほとんど扱うところはない。逆に、ホームセンターといわれるところには、必ず置いてある。今の時代、この収納ボックスがないと、家の中が、整理ができないと言っても過言ではない。箪笥の代わりにクローゼットの床や、上部棚にこの収納ボックスが使われることが多くなった。

 しかし、メーカー視点で見ると、この収納ボックス、なかなかの難物なのである。というのも、中身が空っぽだからだ。効率のよい物流は、空荷をいかにして防ぐかがポイントになる。要するに、中身がぎっしり詰まっているモノの方が効率的だ。

 ところが、収納ボックスは、この空間にこそ意味がある製品。このため、数量の割にスペースをとる。倉庫然とした、天井も高いところでないと並べることができないし、輸送効率も悪い。物流の鉄則は「空気を運ぶな」。しかし、収納ボックスは空気と言える典型的な製品だ。

ロジスティックの隣に工場を

アイリスオーヤマの収納ボックス

 普通、工場を作る時は、土地があり、電力に恵まれ、材料が運び込みやすく、従業員を集めやすい。これをまとめたのが、いわゆる工業団地だ。そして近くにロジスティックを構築する。しかし収納ボックスは違う。ロジスティックを基準に工場を建てるのだ。

 収納ボックスの生産は、技術的には容易だ。樹脂ペレットを入れるサイロ、専用の金型、そして樹脂を熱で溶かし、金型に送り込む射出成型機があれば、製造できる。かなり狭いスペースでも対応することができる。大変なのは、保管だ。そのため、製造したらそのまま、店に納入したい。そしてできる限り、輸送距離は短くしたい……。

 もうお分かりだと思う。アイリスオーヤマが国内生産に切り替えた50品目はすべて収納ボックス関連なのだ。今までは、中国でふんだんに作り、日本へ持ってきていたが、エネルギー費が高騰したため、輸送費が跳ね上がり、海外生産のメリットがなくなったわけだ。

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