2024年12月22日(日)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年7月14日

最廉価版の「i2」(iRobot提供)

 ロボット掃除機の代表メーカー、米iRobot社。ロボット掃除機、ルンバを出して20年、世界でも特異な家電メーカーと言える。最大の特徴は、マーケティング戦略と商品開発のバランスの良さ。メーカーがなりたい姿の一つと言ってもいいだろう。

 そんなiRobotが、新製品のベーシックモデル「i2」を3万9800円で販売する。これにより、日本のロボット掃除機市場が変わる可能性がある。一つは、普及価格が、今までの5万円から4万円になること。もう一つは、初めての掃除機=ロボット掃除機でもあり得るということだ。

バブル後、5万円が一つのボーダー

 デジタルカメラが大きく認知されたのは、1995年発売のカシオ「QV-10」。本体価格は6万5000円(税抜)で、大ヒットとなった。ただし、これはアーリーユーザーでの話。怒涛のような勢いで普及が始めるのは、それから数年後、5万円を切った時のことだ。そして2002年、フィルムカメラはデジタルカメラに逆転される。

 要するにこの時期、個人消費で5万円は「まっ、いいか」という感覚で出せる金額だった。新しいモノの情報が伝わってきた時、自分が買ってもいいという境目の価格が5万円程度だったわけだ。

 アナログ時代、製品の価格は、積み上げ式で決まっていた。A、B、Cという機能それぞれに価格があり、それが積み上げられていく。このため、安いと必要な基本性能を満たしていないことすらある。

 一方デジタル機器の場合は、多くの場合、すべての機能をワンチップ化する。そして一部機能を使えなくすることにより、機能差を付ける。要するに、フルスペックを作ってから、どんどん機能を削る。このため、キーチップが普及すると一気に根を下げることができる。

iRobotが背負っている課題と価格

 iRobotの場合、これに加えて、ロボット掃除機市場の牽引社という立場が加わる。要するにロボット掃除機を普及させることが必要なのだ。このため販売価格には非常に敏感だ。色々なモデルを開発したiRobotだが、アメリカのAmazonをみると、多くの主力モデルは、クリスマス商戦で、1000ドルを切る価格になるように設定されている。日本円に換算すると10万円以上だが、感覚的には1000ドル=10万円。要するに2人になったら、結婚したら買って欲しいという感覚だ。二人共働きの場合は、5万円×2。10万円は出せる価格だからだ。

それが、今回の新製品「i2」のメーカー価格は、3万9800円(税込)。4万円をきってきた。この価格は、不況続きの令和でも、ブレイクを誘発できる価格でもある。もう一つ重要なのは、「初めての掃除機」としても買ってもらえる価格帯だということだ。しかし、どうしてこんなことができたのだろうか。


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