2024年4月27日(土)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年7月14日

「i」シリーズの異端児、「i2」

 現在、日本で正式にカトログ掲載されているモデルは、高い方から「ルンバs9+」(18万6780円(税込))、「ルンバ j7 / J7+」(9万9800円/12万9800円)、「ルンバ i3 / i3+」(4万9800円/7万9800円)、「ルンバ i2」(3万9800円)だ。

ルンバj7+。+モデルは、クリーンタワー付き

 同社のオンラインショップは、この他のモデルも販売しているが、iRobotが考えている正式モデルは上の通り。同じモデルで、「+」がついているモデルは、「クリーンベース」付きのモデル。クリーンベースというのは、ルンバが掃除をする度に、ルンバからゴミを吸い取り中の紙パックに蓄積していく。そして3カ月に一度くらい、紙パックを交換すれば良いという、「床掃除を忘れてもらいたい」iRobotらしい充電台兼ゴミ箱だ。

 それはともかく、価格だ。まず、10万円台に「ルンバ j7」がある。iRobotの主力モデルで、コストパフォーマンスも含め、お勧めモデルだ。そして5万円に「ルンバ i3」。これバブル期ならブレイクできる価格だろう。そして、その下に、4万円の「ルンバi2」。令和のデフレ状態でもブレイクさせたい価格だと言える。

 「ルンバ i3」「ルンバi2」も、同じiシリーズで、価格も1万円差。できることもかなり似ている。オンラインショップで比較すると、差は「部屋を指定して清掃」ができるかできないだけだ。しかし、この2つのモデルには大きな違いがある。

デジカメ搭載の「ルンバ j7」、非搭載の「ルンバi2」

ルンバj7はメインセンサーにデジカメが使われている

 ロボット掃除機で重要なのは、「お部屋マップ」を作ること。そのためには、部屋のどこに何があるのかを感知することが重要になる。iRobotは、それをセンサーの組み合わせではなく、人と同じように、視覚で行おうと考えた。技術的に言うと「デジカメ」とビッグデータの組み合わせだ。「j7」など高機種はこの技術が搭載されている。

i2のメインセンサー。デジカメではない

 それはビッグデータにより、精度を増すことができるからだ。映像データが溜まれば、溜まるほど、ルンバがかしこくなるのだ。しかし欠点もある。デジカメは高いのだ。このため売価で5万円の差がある低価格モデル「i3」「i2」は、いろいろなセンサーの組み合わせで対応する。

 こちらは、2002年、ルンバが産声を上げた時、デジカメが高価で、画質も粗い。まだ使い物にならない時代から連綿と磨き上げてきた。このため、かなりの精度で「お部屋マップ」を作ることはできる。しかしデジカメ搭載モデルほどの精度はない。このため、「i3」はマップを使って最低限できることを、「i2」はマップを持たないモデルにした。ある意味「i2」は、2015年頃のルンバに似る。

 それでは、最新モデルの「i2」は古いモデルと言っていいのだろうか? それは、違う。ロボット掃除機は、「ロボット」と「掃除機」、双方優れていなければならない。ロボットの仕様で、iRobotがデジカメにこだわるのは、ビックデータによりITが強化されれば、できることが増えるからだ。センサーをたくさん付けるより、効果なのだ。例えばペットのフン。人は見て触ってはいけないと判断するが、センサーは触らなければ感知できない。人の情報量の80%は視覚だと言われているが、その人間が作るロボットなのだから、やはり最後頼るのは視覚(デジカメ)なのだ。

ゴムローラー(iRobot提供)

 しかし、ロボット部分がいかに優れていても、掃除機部分が良くなければ、ロボット掃除機としては二級品となる。ルンバが他のメーカーより優れているのは、この部分だ。特に、ゴミを掻き取るのをブラシではなくゴムローラーにしているのは素晴らしい。吸い取りも素晴らしい上、ブラシのようにローラーに髪の毛などが絡むことも、ほとんどない。メンテナンスフリーの強力掃除機だ。

 「i2」に、メンテナンスフリーでかつ掃除機に不可欠部分は、全部揃っている。ロボット部分の技術のあり方が、少し古いだけなのだ。ただし、iRobotはデジカメレスモデルを切れ目なく開発、販売してきた。錆び付いた技術ではなく、ピカピカに磨き抜抜いてきた技術だといえる。i2は、安かろう、悪かろうのモデルではない。


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