ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、ウクライナ東部ドニプロ市への攻撃で、「新しい通常兵器の中距離弾道ミサイル」を使用したと明らかにした。ウクライナ政府はこれに先立ち、ロシアが大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したと発表していた。
プーチン大統領は演説で、「オレシュニク」と名付けた新しい極超音速の中距離弾道ミサイルの発射「実験」を実施し、「目標に到達した」のだと述べた。
大統領は、「アメリカ製とイギリス製の長距離ミサイルが使用されたことに対応し、今年の11月21日、ロシア軍はウクライナの軍産複合体拠点のひとつを攻撃した」とも述べた。
プーチン氏はさらに、ロシアに対する攻撃に自国の兵器が使用されることを許可する国々の軍事施設を、ロシアは攻撃する権利があるとも述べた。
アメリカはアメリカ製「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」、イギリスはイギリス製長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」についてそれぞれ、ウクライナがロシア国内への攻撃に使用することを、18日までに許可したとされる。これは両国にとって大きな方針転換だった。
プーチン大統領は、新型ミサイルの速度がマッハ10(秒速2.5~3キロ)のため、迎撃は不可能だと強調。さらに西側諸諸国に対して、「どういう展開があってもロシアは対応できる。これを疑う者がいるなら、疑うのをやめるべきだ。我々は必ず反撃する」と警告した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はソーシャルメディア「X」で、ロシアが最新型ミサイルを使用したことは「この戦争の規模と残酷性が、明確に、かつ深刻に激化した」ことを示すものだと書いた。
「ロシアは平和に何の興味も抱いていない、またしても示す証拠だ」と大統領は書き、「プーチンは戦争を長引かせるだけでなく、平和の回復を本当に願う世界中の人たちに向かって唾を吐いている」と非難した。
アメリカ政府の国家安全保障会議(NSC)は、ウクライナに対して「実験的な中距離弾道ミサイルが使われた」と指摘した。さらに、ロシアはまだこの新型ミサイルをわずかしか製造していないとして、戦況を大きく変えるものにはならないとの見方を示した。
米国防総省のサブリナ・シン副報道官は、ロシアがミサイルを発射する前にアメリカは「短い」通告を受けたと明らかにした。核兵器のリスク削減を目的とする連絡体制を通じたもので、ミサイル発射も通告対象になっている。
ロシアが21日早朝にICBMを発射したというウクライナ空軍の発表について、一部のメディアは匿名の西側消息筋の話として、弾道ミサイルではあるものの、大陸間弾道ミサイルではなかった可能性があるとの見方を伝えた。
これについてゼレンスキー大統領は通信アプリ「テレグラム」で、ICBMの「特徴」を備えた「ロシアの新しいロケット」にウクライナが攻撃されたと主張。「速度や高度などすべての特徴は、これが大陸間弾道(ミサイル)だと示している。現在、点検中だ。プーチンがウクライナを訓練の場に使っているのは明らかだ」と書いていた。
象徴的に重大な意味合い
イギリスのシンクタンク、王立防衛安全保障研究所(RUSI)の軍事科学専門家、マシュー・サヴィル氏は、今回使われたミサイルについて得られている情報から、ロシアがウクライナに対してすでに使っていた弾道ミサイル「イスカンデル」(最大射程500キロ)よりも、射程距離が長いようだと話した。
プーチン大統領は新しいミサイルが、中距離弾道ミサイル(IRBM)だと説明した。IRBMの射程距離は3000~5500キロ。
今回のような中距離弾道ミサイルの使用は、軍事的にはそれほど重要ではなくても、象徴的には大きい意味を持つとサヴィル氏は指摘。ロシア政府が、核兵器使用の指針を改定したばかりなだけに、核兵器使用の敷居が引き下げられた可能性もあるという。
今回のミサイル攻撃は、ロシアはさまざまな種類の大型ミサイルを保有しており、さらに開発する用意があるのだと、広く明示する効果があったと、サヴィル氏は話した。
(英語記事 Putin warns West as Russia hits Ukraine with new missile)