2024年12月22日(日)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年2月5日

 かつて日本の〝屋台骨〟とまで言われた家電メーカーのうち、シャープ、東芝の白物家電、三洋電機の洗濯機・冷蔵庫事業部が、中国メーカーの傘下に入った。定義にもよるが、ざっと3分の1〜4分の1が買収されたことになる。

 それでも、中国傘下に入ったこれらの企業から新しく発売される製品を見ると、以前よりも優れた製品もあり、買収されたことがプラスになっている場合があることも事実だ。

 その中で、中国のMidea(マイディア、美的集団)グループの一員である東芝ライフスタイル(以下、東芝LS)の取締役経営企画統括部長・山脇弘氏に現状を聞いた。

マイディアグループ本社(広東省仏山市)

 マイディアグループは、創業1968年の中国の白物家電メーカーだ。製造シェアはハイアールに次ぐ世界第2位で、売上高は約4.6兆円(2020年)。ただしブランド的には、日本市場ではほとんど展開されてないブランドでもあり、はっきりいうと弱いというより、ほとんどの日本人は認知していない。

 売上が大きいのは、日本メーカーを含むOEM、パーツ生産を請け負っているためだ。商品に絡む技術より、どちらかというと生産技術に強い。ちなみに、東芝とマイディアは1993年のエアコンを皮切りに以降協業している。

 企業買収でありがちなのは、持ち株会社(ホールディングス)が一切の内容を決めるため、当事者(売買される子会社)のメーカーには何も知らされないことはよくある。東芝LSの際も、そうだったそうだ。

東芝LS取締役経営企画統括部長・山脇弘氏

 株式譲渡契約日は、2016年3月30日で、株式譲渡日は、2016年6月30日。翌2016年7月1日がいわゆる移籍後第1日目になる。その日、マイディア側から言われたのは「東芝LSとして独自な活動を保証する。東芝LSとしてやってきたビジネスは全て継続発展させること。シナジーは全て両メーカーで協業してことにあたること」だったという。

 マイディアのポジションを考えると頷けるところがある。安価モデルの量産技術、また日本メーカーにOEM納入できる製品を作る技術は持っている。しかし、モデル個々の技術としては日本市場のトップを狙うには不足している。私が知る限り、中国の民間企業は自社の実力を過大評価しない。そう考えると、出るべくして出た要求とも言える。

 一方、東芝は家電の激戦区である日本市場のトップブランド。欧米では、白物は展開していないが、テレビ、PC系の黒物家電は、人気がある。しかし一方、経営的には、親会社で不祥事が続き、東芝L Sの事業拡大をサポートすることは難しい。

 要するに2社の足らないところを完全補完するという、ほぼ理想的な形を形成することになる。「生産」「経営」「グローバルでの販売網」「入門ブランド」に長けたマイディアと「高価格帯ブランド」「商品企画、設計、展開」に長けた東芝LSには、重複部分がほぼない。これなら互いを尊敬し合い、粛々と仕事を進めると上手く行く。


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