2024年12月21日(土)

World Energy Watch

2024年6月11日

 米国では仕事相手との雑談の際に、乗っている車の車種を聞かれることが多い。車に関心がある人が多いこともあるが、本当の目的は年収を探ることだ。

 米国では、よほどの車好き以外は、所有している車の価格と年収が比例していると言われている。

 車に掛ける費用は月収の1割までにすべきと言われている米社会なので、車の値段と年収が比例するのだろう。ちなみに、最近の調査によると平均的な世帯では月収の2割が車のローン、保険、維持費、燃料代に使われている。車の値段とガソリン代が上昇しているのが、原因だろう。

 フォード、GMの大衆車に乗っていれば年収も中くらい。レクサスとかメルセデスに乘っていれば、年収はかなりあると推測できる。

(Natnan Srisuwan/gettyimages)

 米国の住宅街を歩けば、所得と車の関係がよく分かる。高級住宅地に大衆車が駐車されていることはまずない。一家に2台、3台あるが、どれも高級車のことが多い。

 中には、すべて米国車のテスラ、リンカーンなどという家もある。熱烈な愛国者かもしれない。

 車を見れば年収が推測できる米国で、今、電気自動車(EV)を購入するのは年収の高い層だ。EVの平均価格が内燃機関自動車(ICE)よりも高いことに加え、所得税を7500ドル(約115万円)以上支払っている高所得者しか、連邦政府の最大7500ドルの補助金を全額受け取れないのだ。

 所得が少ない人は、価格が高いEVを買えないし、仮に購入しても連邦政府の補助金を受け取れないとなると、購入の意欲は失せるだろう。

 池田勇人元首相が、蔵相時代に「貧乏人は麦を食え」と発言したと報道されたことがある。正確には「所得の少ない方は麦、所得の多い方は米を食べるというような経済原則に沿ったほうに持っていきたい」と述べたが、分かり易く端的に伝えると「貧乏人は麦を食え」になる。

 米国の現状を端的に伝えれば、「貧乏人はガソリン車に乗れ」だが、その動きはますます加速しているようだ。

 

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