電気自動車(EV)が売れている。中国ではバッテリー稼働(BEV)とプラグイン・ハイブリッド(PHEV)を合わせたEV乗用車の月間販売台数が今年3月から50万台を超え、販売される乗用車の3台に1台がEVになった。
欧州主要国、独英仏では、販売される乗用車の5台に1台がEVになっている。5月の世界のEV乗用車の販売台数は、100万台を超えたはずだ。
22年の世界の自動車の販売台数は約8200万台。国際エネルギー機関(IEA)によると、EV乗用車の販売台数は約1020万台。トラックなどの商用車を含めるとEV車は1050万台になり、シェアは12%を超えた。
中国と欧州の乗用車市場に米国の乗用車、SUV、ピックアップトラック市場を加えると、3市場は世界の約7割のシェアを持つ規模になる。EVのシェアが大きい中国と欧州だけで世界市場の約5割だ。
中国と欧州、世界市場の半分が積極的なEV導入に向かい、EVシェアは毎月上昇している。加えて、EVのシェアがまだ10%に届いていない米国でも、今年第1四半期のEVシェアは8%。直ぐに10%を超えそうな勢いだ。
自動車輸出トップにのし上がった中国
中国、欧州、米国の世界の3大自動車市場以外ではEVの存在感は薄いが、7割のシェアを持つ3大市場でのEV導入の生産への影響は半端ではない。
世界の3大市場でEVの販売が増えれば、世界一のEV導入国であり、生産国でもある中国が世界市場で当然有利な立場に立つ。IEAによると世界のEV生産の約6割は中国が担っている。その中国は、EVをテコに今年第1四半期に遂に日本を抜き世界一の自動車輸出国にのし上がった。
EVの販売が増えている欧州市場が、中国の輸出世界一に貢献しているのは言うまでもない。中国製EVが温暖化対策と産業振興を目的にEV導入政策を進めている欧州連合(EU)と英国の市場を席巻することになれば、日本の太陽光発電設備市場での出来事が再現される。
2010年当時の民主党政権は環境立国日本戦略として、太陽光パネルを中心とする再生可能エネルギー導入を打ち出し、12年には固定価格買取制度(FIT)導入により、太陽光パネル設置への強力な支援を始めた。
FITの下で再エネ電源からの電気の買取に既に20兆円以上を投入し、日本の太陽光発電設備導入量は中国、米国に次ぐ世界3位になったが、日本のパネル輸入比率は今90%だ。
環境立国戦略は、20年での50兆円超の環境関連新市場と140万人の新規雇用を想定していた。私たちが目にしたのは、中国製パネルが世界、日本で溢れる姿だけだった。戦略は日本の国内総生産(GDP)にも雇用にも寄与しなかった。
EUのEV戦略の末路は、日本の太陽光導入戦略から想像できると言えば言い過ぎだろうか。