2024年12月6日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年6月20日

 5月21日に閉幕した主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の首脳らも招き、混迷極める国際社会の新たな結束を世界へ呼びかけた。その背景には、トランプ政権後期からの米中対立激化に加え、ウクライナ侵攻で新たな局面を迎えた「世界の分断」がある。

G7広島サミットで写真撮影をする岸田文雄首相と招待国首脳ら。世界の分断を食い止められるか(THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO) 写真を拡大

 力による現状変更を試みたロシアに対し、日米欧は結束して対峙し、世界の分断は、「西側」と「中露」の2軸による深刻な対立となった。これら2軸に属さない「第3極」を構成する主要国─インド、東南アジア、中東諸国など─を2軸側がそれぞれに取り込みを図る綱引きも発生している。こうして世界の分断は構造化・深刻化の度合いを深めている。冷徹な現実主義に立てば、この分断構造の存在と持続を前提とした国家戦略をそれぞれに考えていく必要がある。

 世界の分断は安全保障重視の世界観形成につながる。分断深刻化の前は、自由貿易や国際分業が重視され、効率追求とコスト最小化が重要だった。しかし分断の世界では、追加的コストがかかっても戦略的に重要な資源・技術の国産化や同盟国・戦略的パートナー間での可能な限りの供給確保を図る動きが強まる。戦略物資のサプライチェーンを見る目が安全保障重視へと変化したのだ。当然、この潮流がエネルギー情勢にも影響を及ぼす。エネルギー安全保障が重視され、エネルギー自給率向上やエネルギーサプライチェーン構築を同盟国・戦略パートナーとの協力・連携で達成すべく最大の努力を実施し、多様化と緊急時対応能力の強化が重視されることになった。これらの点でも、中東やインド・東南アジアとの連携強化を図る動きが国際エネルギー秩序を左右する重要な要因となる。

 今年は第一次石油危機から50年という節目のタイミングであり、深刻なエネルギー供給不安がエネルギー秩序の安定を根底から揺さぶる、という当時の教訓を改めて思い返すことも重要である。各国が他者を押しのけてでも自らのエネルギー安定供給確保に走ることは、エネルギー秩序の瓦解を招く。それがまさに第一次石油危機で発生した事象であり、瓦解した秩序を再構築するために設立されたのが国際エネルギー機関(IEA)であった。

 本稿を執筆している5月末現在、国際エネルギー価格は昨年のピーク時よりも低下し一定の落ち着きを取り戻しているが、今後の展開は予断を許さない。新たな地政学事象によるエネルギー供給支障の発生、猛暑や厳冬による需要の急拡大、中国のエネルギー「爆食」再開などが起これば、国際エネルギー市場で「排他的ゼロサムゲーム」の争奪戦が発生する可能性も否定できず、50年を経て再びエネルギー秩序の安定が激震に晒される可能性もある。


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