主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)には、G7に加えいわゆるアウトリーチ国としてブラジル、インド、インドネシア、韓国、豪州等8カ国が参加、欧州連合(EU)も含め計16の国・地域と機関の首脳が一堂に会した。
サミットが主要議題として挙げるのは主として3点、ウクライナ問題、中国、核軍縮・不拡散だ。それぞれ現下の国際社会が取り組むべき短期、中期、長期の問題といえる。
こうやって見ると、今、われわれが如何に歴史的転換点にいるかが分かる。一言でいえば、米国主導で作り上げてきた戦後国際秩序が深刻な挑戦に晒されている。今後、この秩序を維持していけるか、あるいは崩壊に向かっていくのか、われわれはその岐路に立っているのだ。岸田文雄首相が歴史的サミットと言うのもあながち誇張ではない。
揺るがされつつある戦後の国際秩序
まさかと思われたロシアのウクライナ侵攻が、世界が見守る中、堂々と行われた。ロシアは国連安保理の常任理事国で、戦後の国際秩序を主導してきた5カ国のうちの一つだ。いわば現在の国際秩序に直接責任を有する国が率先して秩序破壊に乗り出した。
もう一つ、中国もまた常任理事国だが、これも台湾侵攻を躊躇することはないと公言する。常任理事国5カ国の内2カ国が、国際秩序を踏みにじることを意に介さないと言い放つ。戦後70余年、われわれはこれほどの危機に直面することはなかった。
国際秩序は、米国の下で維持され世界は繁栄を享受してきた。とりわけ冷戦終結後はグローバル化が進行、国境の垣根が取り払われ、効率化が極限まで追い求められた。そのグローバル化も今や色褪せて見える。グローバル化に代わり経済安保が主役となり、効率は安全保障に取って代わられた。
こうなった背景に米国の力の相対的衰退がある。戦後、米国は圧倒的な国力で世界に君臨した。ドルが世界貿易を支配し、米国市場が各国に解放された。しかし、その力は失われて既に久しい。
米国に国際秩序を単独で守り抜く力はなく、同盟国の力を頼んでのみその維持管理が可能だ。G7は結束しなければならない。その結束を世界に向かって誇示しなければならない。G7は、世界に対し、「力による秩序の一方的変更は断固として認めない」と力強く発しなければならない。それがこのサミットの最大の眼目だ。