ウクライナ支援はいつまで続けられるか
ところが、上にあげた3つの議題はそろって難問ぞろいだ。まず、ウクライナだが、G7が結束してウクライナ支援にあたることに反対はない。問題は、今後どこまで支援を続けられるかだ。
既に、侵攻開始から1年3カ月になる。ウクライナの戦線は膠着状態にあり、ウクライナが反転攻勢に出るとしても戦況が劇的に変わるわけではない。一方、欧米は、高まるインフレと、それを抑え込むための金利引き上げで国民が悲鳴を上げつつある。
ロシアの非道に経済制裁で対抗する以上、自らも返り血を浴びることは当初から予想されていた。しかし、実際、エネルギー価格が高騰し、それが、光熱、食料、輸送等あらゆる経済活動に深刻な影響を及ぼすにつれ、欧米各国の国民は、その「返り血」が尋常のものでないことを知りつつある。
ことの外重要なのは、米国民が持ちこたえられるかどうかだ。ウクライナ支援で米国の存在は突出する。ここで米国民が音を上げ支援が先細りするようなら、国際秩序の維持も危うくなる。バイデン大統領が、国内に債務上限問題を抱えつつも、サミット出席のため来日したのは、G7の結束を世界に示すためもあるが、もう一つ、米国民に支援の重要性を訴えかける狙いもあった。
一筋縄ではない対中国への姿勢
二つ目の中国を巡っては、G7の結束はサミット開催前から脆さを露呈している。4月、訪中を終え帰国の途についたフランスのマクロン大統領は、機内でインタビューに応じ、「欧州は台湾問題に関し米中対立に巻き込まれてはならず、戦略的自律性を維持しなければならない」と述べた。すぐに国内外からごうごうたる非難が巻き起こったが、案外、マクロン大統領の本音はこんなところにあるのかもしれない。
フランスはドゴール以来、自主独立の伝統を保ち米国の風下に立ちたくないとの思いが強い。マクロン大統領は国内的に年金改革で苦しい立場にあり、ドゴール主義で国民の団結に訴えたいとの事情があったことも理解できる。しかし何といってもタイミングが悪すぎる。
台湾の蔡英文総統が中米2カ国歴訪の際に米国へ立ち寄ったことに中国が反発し、威嚇に出た矢先のことだ。これでは、G7の足並みの乱れを中国に見てくれと言っているようなものでないか。
フランスはインド太平洋に艦船を派遣、アジアの安全保障に並々ならぬ関心を示しつつ、他方で、台湾侵攻の場合、米国と同一歩調をとるとは限らないという。日本として聞き捨てならないメッセージだ。中国の覇権主義的行動はG7が一致して対抗してこそ抑えることができる。初めからバラバラでは中国を抑えるどころでない。