2024年11月22日(金)

Wedge OPINION

2023年5月27日

 訪日に際しての仏政府専用機利用も、フランス訪問時に内々了解があったのだろう。無論、全ては極秘裏だ。

 ゼレンスキー氏が広島に来てサミットに出席したことは、今回の会合にひときわ大きな意味を持たせることになった。サミットの眼目は、G7による国際秩序維持に向けての結束を示すことだ。

 ロシアの侵略を受け、今戦っているその当事国の首脳が会議に参加することは、G7が打ち出すメッセージを一層強烈なものにする。しかも、サミット会場は広島だ。ゼレンスキー氏が広島で、核の不使用を訴えればこれ以上ないインパクトだ。

 日本外交は大きな成果を上げた。サミットのメッセージ性をこれだけ強く打ち出したのは近年類を見ない。G7各国は、そろって広島サミットを大成功と高く評価した。では招待国はどうか。

もう一つの注目点「グローバルサウス」の反応は

 今回のサミットは、一方でG7の結束を打ち出すことを目的としつつ、もう一方で、グローバルサウスの取り込みを目的とした。近年、G7の相対的な国力低下は著しく、かつて6割以上あった世界の国内総生産(GDP)に占める割合は近年4割にまで減少した。

 最早、G7が単独で国際秩序維持に当たることはできず、グローバルサウスを巻き込むことが不可欠だ。今回、8カ国を招待し3回の拡大会合を行ったのはそのためだ。しかし、招待国にとり、ゼレンスキー氏の出席は寝耳に水だった。

 招待国には招待国のG7出席に向けた思惑がある。この機会に、グローバルサウス側の問題に光を当てさせ、あわよくばG7から協力を引き出したいというのがその狙いだ。ところが、来てみればゼレンスキー氏が出席するという。これではサミットはウクライナ問題一色になる。

 グローバルサウスの中には、ウクライナ問題でG7と一線を画すところが多い。インド、ブラジルはその代表格だ。そういう国にとり、ゼレンスキー氏出席のサミットに参加し、G7に取り込まれたかのような印象を与えるのは不本意以外の何物でもない。

 G7にとり、ゼレンスキー氏出席は、グローバルサウス取り込みの点ではリスクがあった。不意を突かれた招待国は、もやもやした気持ちを拭いきれずサミット会場を後にしたに違いない。日本はそういうワナを仕掛けてくる国だ、と思ったかもしれない。これでは、グローバルサウスの取り込みの上で逆効果だ。

 そのリスクは否定しがたい。しかし、他方で、ゼレンスキー氏と同席したからといって、グローバルサウスがウクライナ問題でG7に取り込まれるわけでないことも明らかだ。各国は、自らの国益を冷徹に計算しウクライナ問題の立ち位置を決めている。ゼレンスキー氏との同席ぐらいでそれがどうこうなるわけでもない。

 そもそも、グローバルサウスは、G7にも中露にも取り込まれないことが外交方針と言われるが、本質はむしろ別のところにある。これらの国は国益の判断で動いているのだ。

 G7からも中露からもとれるものは何でも取り、国益最大化を図ろうというのがグローバルサウスの本質だ。ゼレンスキー氏との同席は、その意味で取るに足らないことでしかない。むしろ、G7がグローバルサウスに如何なる実利を提供できるかが重要だ。その取り込みのためには首脳宣言の具体化こそが重要なのだ。

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