5月19日から広島市内で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、欧米や日本など自由主義諸国が結束を高めようとする中、その動きに対抗するかのようにロシアが中国、インドなどに加えアフリカ諸国との連携強化を誇示しようとしている。アフリカは食料輸出や武器供給などでロシアに依存する国々が多数あり、政治、経済面でその影響力を色濃く受けている。
5月中旬には、南アフリカがロシアに武器を輸出していた疑惑まで浮上したが、プーチン大統領は即座にラマポーザ大統領と電話会談を実施し、食料危機が進行するアフリカへの穀物供給を約束するパフォーマンスを見せた。ロシアはG8からかつて、ウクライナのクリミア半島を併合したことで排除された経緯もある。
自らのウクライナ侵攻と、黒海封鎖がアフリカを中心とする国々の飢餓状態を急激に悪化させているにも関わらず、あたかも救済者のようにふるまうプーチン氏の姿勢は〝偽善〟にほかならない。政権基盤が弱い国々に武器輸出や私兵集団「ワグネル」の派遣を通じロシアに依存させ、自陣営に引き込む手法は恫喝に等しいが、プーチン政権はそうやって培ったアフリカ諸国との関係性を最大限に利用している。
冷戦時代から続くアフリカとの関係
「プーチン大統領は食料安保をめぐる協議において、南アフリカのラマポーザ大統領に対し、必要ならばアフリカ諸国に対しては、大量の穀物と肥料を送る準備がある。一部は〝無料〟で送る用意があると伝えた」
5月12日、プーチン氏はラマポーザ氏との電話会談でそう提案したという。あたかもアフリカの食料危機をロシアが救うかのような言いぶりだ。
南アフリカをめぐっては11日、同国に駐在する米国大使が「南アは2022年12月に、ロシアへ秘密裏に武器や弾薬を提供したとの情報がある」と指摘し、国際社会に衝撃を与えたばかりだった。ロシアとの関係を理由に国際社会の批判を浴びかねない南アを、プーチン氏が即座に〝救済〟した格好だ。
両氏はまた、7月下旬にロシア・サンクトペテルブルクで開催される「ロシア・アフリカ首脳会議」や、8月にヨハネスブルクで開催されるロシアや中国、インド、ブラジル、南アがメンバーの「新興5カ国(BRICS)首脳会議」をめぐっても意見を交換したという。プーチン氏の言動からは、G7が対ロシアで協調を強めようとするなか、アフリカ諸国などとの関係を誇示して国際的な孤立イメージを払拭する狙いが透けてみえる。
プーチン氏はウクライナ侵攻を背景に国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状を出されており、ICC加盟国の南アはプーチン氏が首脳会議で訪問すれば同氏を逮捕する義務を負う。しかしラマポーザ氏は、ICCからの脱退を目指すと発言するなど極端にロシア寄りの姿勢を繰り返し示している。