2024年12月22日(日)

教養としての中東情勢

2023年4月30日

 アフリカ北東部スーダンの武力衝突は発生から3週間以上経過した現在も戦闘終結の見通しはない。日本は自衛隊機を派遣して邦人の救出に当たり、退避した約50人が無事帰国した。衝突は正規軍と準軍事組織による権力闘争だが、同国の金や石油などの鉱物資源や利権に群がる各国の思惑がその背景にある。

スーダンの軍事衝突で、避難を待つ人々はまだたくさんいる(ロイター/アフロ)

繰り返されるクーデターと権力衝突

 衝突は4月14日に発生した。事実上の軍事政権である「統治評議会」の議長、ブルハン将軍率いる正規軍と、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の対立が戦闘に発展した。

 RSFの司令官は統治評議会副議長のダガロ将軍だ。勢力は両勢力とも10万人規模で拮抗しているため、泥沼化が懸念されている。国連によると、これまでに死者512人、負傷者4千人強が出ている。

 スーダンはアフリカで3番目の広さを持つ大国で、人口は約4700万人。大河ナイル川が流れているため肥沃な大地に恵まれており、農業発展の可能性が見込まれ、また石油や金、レアアースなどの鉱物資源が豊富だ。特にスエズ運河に通じる交易の大動脈、紅海に面する要衝に位置していることがその戦略的な価値を高めている。

 しかし、同国ではバシル独裁政権が30年間も君臨し、国民は圧政にあえいできた。1990年代の一時、国際テロ組織オサマ・ビンラディンの潜伏拠点にもなった。

 転機が訪れたのは2019年だ。物価の高騰などに怒った反政府デモをきっかけとした軍のクーデターで独裁政権が崩壊し、文民主導の暫定政権が発足した。

 だが、軍は2年後に再びクーデターを起こし、民主勢力を排除して「統治評議会」を樹立した。昨年末、評議会は欧米やアラブ、アフリカ諸国からの圧力を受け、いったんは民主派との間で民政移管に向けた「枠組み」に合意した。しかし、正規軍のブルハン議長とダガロ司令官はRSFの軍編入問題で対立、武力衝突に至った。


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